2013年03月14日

イメージクラシック「嵐」その9

シューベルト アレグロイ短調『人生の嵐』

 強い南風が吹きつける一日でした。舞い上がる砂嵐の中を目を伏せながら歩いていると、「春の嵐」という言葉を思わずには居られませんでした。

 ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの小説に『春の嵐』というのがあります。盲目の音楽家が主人公で、物語の持つ激しくも透明な抒情性に高校生のころ感動した覚えがあります。僕はヘッセの青年小説の持つ美しい叙情性はシューベルトの音楽の持つ美しい叙情性に似ているなと思うことが良くあります。

 ピアノの連弾曲『人生の嵐』はシューベルトが生涯最後の一年に作曲された曲です。『人生の嵐』とは、シューベルトが名づけたものではなく、この曲を聴いた人が、冒頭のたたきつけるような激しい主題からつけたニックネームです。したがって、この曲には人生の嵐などというストーリー性は全くないはずなのですが、シューベルトの最晩年の激しい曲ということもあって、何か意味づけをしたくなる不思議な力があるように思います。

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2013年02月22日

イメージクラシック「春」その10

グリーグ ヴァイオリンソナタ第3番ホ短調

石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも(志貴皇子)

 2月もあとわずか、快晴の日の昼間はちょっと春を感じさせる陽気があります。梅の花が咲いていました。温かく生命が息吹く春はもうすぐ近くに来ています。

DSCF2104.JPG

 厳しい冬から、春への憧れ、岩に当たってしぶきを上げる雪解け水、冬から春の自然の移り変わりをイメージさせてくれる熱い思いに満ちた曲が、北欧の抒情的作曲家グリーグヴァイオリンソナタ第3番です。グリーグ円熟期に書かれたこの曲は、ノルウェー的抒情とがっちりとした構成が共存する傑作だと思います。

第1楽章 厳しい冬
第2楽章 春へのあこがれ
第3楽章 ほとばしる雪解け水

 僕はこんなイメージを抱きながらこの曲をいつも聴いています。特に躍動感とスピード感に溢れた第3楽章は他の作曲家の作品では味わえあない魅力があって、3つの楽章の中で僕は最も好きです。

タグ:グリーグ
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2013年02月20日

キーワードクラシック「ドラッカー」その2

ハイドン 交響曲第102番変ロ長調より第1楽章

 その種のものの最高のものと思われるものは、指揮者ブルーノ・ワルターがとった方法である。彼は、シーズンの終わりには全団員に手紙を書いたという。「ハイドンのシンフォニーのリハーサルでは、あの難しい一節の演奏であなたからいろいろなことを学びました。ところで、あなたのほうは今シーズン一緒に仕事をしてどのようなことを学ばれましたか」(ドラッカー『非営利組織の経営』ダイヤモンド社より)

 ドラッカーがハイドンを高く評価していたことは、先回の記事で述べました。音楽史上においてハイドンの行なったイノベーションは、ひらめきや天才性とは関係のないドラッカーのイノベーションの模範になるものでした。ドラッカーは、リーダーシップ自己開発といった人に関するテーマについても数多く述べていますが、その良きモデルとしてオーストリアのユダヤ人指揮者ブルーノ・ワルターを上げています。ワルターは、カリスマ性や専制君主制のような派手な指揮者ではなく、控え目で楽団員と積極的な対話を行なう指揮者でした。

 さて、上記のドラッカーの著作に登場する「ハイドンのシンフォニー」とはどの作品なのだろうと、僕はこの文章を読むたびに、思いを巡らせます。ハイドンは生涯に104曲のシンフォニー(交響曲)を残しました。現在録音が残されているCDを聴きながら、僕がこの曲だったらと思ったのが、交響曲第102番変ロ長調の第1楽章です。

 この曲は、ハイドンの最高傑作群となる、交響曲第93番から第104番までのザロモン交響曲集の中の1曲です。この交響曲集の中には、第94番『驚愕』、第96番『奇蹟』、第100番『軍隊』、第101番『時計』、第103番『太鼓連打』、第104番『ロンドン』などニックネームのついた有名な曲がたくさん含まれています。第102番はニックネームを持っていないため、あまり有名ではありませんが、曲の充実性という観点から見るならば、おそらくザロモンセットの中で最高傑作ではないかとと僕は考えています。

神秘的で霧のかかったような序奏
主題の多彩な展開が生み出す緊張感
変幻自在な緩急
聴衆を驚かせようとするユーモアあふれる仕掛け


おそらくこの曲の持ち味を演奏ですべて引き出すのはとても難しいのではないかと思います。ワルターの素晴らしい演奏を聴いて、「難しい一節」を持つ曲とは、この曲ではないでしょうか。

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若きブルーノ・ワルター


タグ:ハイドン
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2013年02月16日

イメージクラシック「疾走」その5

モーツァルト 交響曲第25番ト短調より第4楽章

この思いをどこにぶつけたらよいのだろうか

 モーツァルト交響曲第25番ト短調は、その第1楽章が映画『アマデウス』のオープニングテーマとして使われ、大変に有名な曲であると同時に、18歳の青年が作曲した、それまで書いていた作品とは全くレベルの異なる突然変異のような記念すべき作品です。有名な第1楽章もいいですが、それ以上に張り詰めた緊張感とスピード感があるのが最終楽章です。

 うつろで悲劇的な主題と緊張感を高める激しいシンコペーションは、まるで悲しみや悔しさをどこにぶつけていいかわからず疾走しているかのような印象を与えます。モーツァルトの個人的な気分が反映されている、あるいはそれとは関係ないなど、この曲をめぐって様々な言及がなされていますが、客観的に見てもその内容の濃さは歴然としています。



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2013年02月06日

キーワードクラシック「チャイコフスキーのワルツ」その3

チャイコフスキー 弦楽セレナードより第2楽章「ワルツ」

温かい暖炉で夢見るワルツ

 真冬の寒い夜は、温かい暖炉にあたりながら内向的なチャイコフスキーのワルツでも聴こう。暖炉の中では火の精が踊り、時折り外を舞う風と雪が窓を揺らす音が聞こえてきます。

 チャイコフスキーの弦楽セレナードは、メランコリックな第1楽章の印象が大変強く、僕は以前冬の朝をイメージさせる曲として取り上げました。それに続く第2楽章のワルツは、対照的でとても温かみが伝わってくる音楽です。弦楽器の持つ温かさがとてもよく生かされていて、チャイコフスキーのワルツの中でも他の曲にはない情緒を持った作品だと思います。

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