2013年05月10日

イメージクラシック「風」その13

メンデルスゾーン 弦楽八重奏曲変ホ長調より第1楽章

こんこんと湧きあがる創造の泉

 五月のさわやかな風が、緑の若葉を揺らす美しい日が毎日続いています。悩みを忘れてしまうような、さわやかさと生命力に溢れたこの環境において、ぜひとも聴きたくなるのがメンデルスゾーン八重奏曲変ホ長調です。

 この曲は聴く人に、こんこんと湧きあがってくる泉のような豊かな楽想を抱かせます。僕は日々、ビジネスのアイデアのことばかり考えながら、行き詰ってしまうことも多いのですが、この曲を聴いていると、ふっと斬新なアイデアがひらめいてくるような気持ちになります。

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2013年04月29日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その4

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調『田園』より第2楽章「小川のほとり」

木管楽器の原点回帰

 木管楽器の響きはおそらく鳥の鳴き声に摸したところが出発点だと思われます。楽器の発展とともに、鳥の鳴き声とは関係なく、木管楽器の音として定着してきました。ハイドンモーツァルトの木管楽器の響きは、その特徴を見事に引き出されていて、完成された美を持っています。そんな木管楽器の完成された響きを、原点の鳥の鳴き声に近づけよう、あるいは鳥の鳴き声に似せようという、それまでとは全く違ったベクトルに向かっていったのが、このベートーヴェン『田園』の音楽です。

クラリネットはカッコウ
フルートは夜鶯
オーボエは鶉
弦楽器は水と光と空気を

 つつじが咲く季節になると、僕は毎年『田園』を聴きたくなります。今回聴いてみて、この第2楽章の木管楽器の響きが改めて新鮮で革新的であることを感じました。『英雄』、『運命』と音楽史の新しい扉を開いたベートーヴェンですが、おそらくこの『田園』が新しく開いた扉は、最もイノベーション的であると言えます。作曲者自身が名づけた標題を持つ唯一の交響曲であることがそのことを物語っています。

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2013年04月10日

イメージクラシック「春」その12

シューベルト 交響曲第9番ハ長調『ザ・グレート』より第1楽章

はじけるような躍動感

 シューベルト交響曲『ザ・グレート』の第1楽章の第1主題は、晴れた春の日に抱く胸の躍動感を感じさせてくれる音楽です。ホルンの牧歌的な序奏を経て、次第に音楽が加速して弾けるように出てくるこ心地よい主題を聴きながら、ずんぐりとした小柄な作曲者が、何か新しいものを抱きながら、野山を飛び跳ねる光景が目に浮かぶようです。

 シューベルトはこの大作を作曲した1年後には31歳の生涯を閉じることになります。この作品は、彼のそれまでの交響曲と比べて、比較にならないほど大きく、まさに突然変異的な様相を持っています。この作品の完成後、「歌はもうやめにした。これからはオペラと交響曲だけにする」と友人に語ったそうです。新境地を開いたものの、まもなくこの世から姿を消した彼の足取りは、何か神秘的なヴェールに包まれています。

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2013年04月02日

イメージクラシック「春」その11

ベートーヴェン ピアノソナタ第4番変ホ長調

久方やの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(紀友則)

 たわわに咲いた桜の花に午後の温かい光が差し込み、その下を期待に弾んだ胸と緊張した面持ちで進んでいく新入社員。今日4月1日は新しい出発の日です。

 このような春の晴れやかさと出発の緊張を併せ持った作品が、ベートーヴェンピアノソナタ第4番です。ベートーヴェンがウィーンに進出して3年目、25歳の時に作曲されました。このソナタは、そのころレッスンを施していた愛弟子に献呈され、作曲者自身から「恋人」という愛称で呼ばれました。特に第1楽章は明るくやわらかい音の響きを持っていて、春ののどかな日を連想させてくれます。

 第1楽章がとても平和的、女性的な雰囲気を持っているのに対して、他の楽章は変化に富んだ顔を見せます。印象的なのが

深く沈黙し考え込むような第2楽章
戦いにいどむような緊張感を持った第4楽章

で、この曲の持つストーリーは春に新しい出発をした若者が抱く心の動きを描いているように思えてきます。若きベートーヴェンの自信と若者特有の悩みが入り混じったような新鮮さがそこにはあります。

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若きベートーヴェン

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2013年03月31日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その3

モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番ニ短調より第4楽章

春の野に響く悲しい鳥の鳴き声

 どんよりとした春特有の曇り空。薄暗い明け方に鳴くホトトギス。朝日が差すのをひたすら待つ続けているようだが、大地には桜の香りが広がるだけで光が差さない。何度も体験したこの風景に、回想的な気分になります。昔も今も同じ思い、ただ境遇は変化していく。

 果てしなく続く物悲しい思い。モーツァルト弦楽四重奏曲第15番(ハイドンセット第2番)の第4楽章は、そんな気持ちにさせてくれる曲です。モーツァルトは、そういった楽想を強めるために、変奏曲の形式でこの楽章を書きました。変奏曲では、ある主題(テーマ)が形を変えて繰り返し出て来るため、短調の主題の場合は、悲しみを切々と訴えるような独特の情感を生みます。

 特にヴァイオリンが執拗に奏でる三連符は鳥の物悲しい鳴き声のようで、強い印象を与えます。この曲も「モーツァルトの悲しみ7選」のひとつにしましたが、その中でも飛びぬけて深い悲しみを与える曲だと思います。

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