2012年12月28日

イメージクラシック「雪」その6

ハイドン 交響曲第26番二短調『ラメンタチオーネ』より第2楽章

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降りつむ
(三好達治『雪』)

 窓辺から見ると外は銀世界。音もなくひらひらと夜空から雪が降ってきて、どこの家も白い帽子をかぶって、同じような家に見えます。清められた白い帽子の下には、温かい家庭が等しく存在するように思えてきます。

 ハイドン交響曲第26番『ラメンタチオーネ』の第2楽章は、グレゴリオ聖歌が用いられていて、本当に心が温かく清められる音楽です。ハイドンの巧みなオーケストレーションが、原曲以上に聖夜のような雰囲気を作っていると思います。ハイドンの交響曲の中では、地味な存在ですが、僕はこの小曲が大変気に入っています。

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タグ:ハイドン
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2012年01月08日

イメージクラシック「雪」その5

シューベルト 4つの即興曲D899より第1曲ハ短調

透き通る冬の青空
太陽が照り続けているのに
空気はどんどん冷たくなっていく
本が詰まった重たい鞄を掲げて
ただ一人進んでいく北の大地
透明な雪がひらひらと
今にも落ちてきそうな無表情な青空を
僕は描こうと思った

 僕は20代の頃札幌に住んだことがあります。瀬戸内育ちの僕には、北国の冬の鉛色の空と地面の見えない雪と氷の世界は閉口するものがありました。たまに雲ひとつない青空の広がる日がありましたが、そういった日は、太陽が輝いているのにどんどん気温が下がっていくのでした。静まり返った冬の石狩平野をすべりながらよく歩いたものです。

 シューベルトのピアノ曲即興曲ハ短調を聴いていると、冷たい北国の青空と、いつの間にかひらひらと落ちて来る雪の景色を思い出します。静けさに満ちた空間に孤独な歌がしんしんと響いていくこの曲をシューベルトが作曲したのは1827年、死の前年です。この年には有名な連作歌曲集『冬の旅』が作曲されており、このころの彼は寂しさを強く感じていたのでしょう。透明で孤独なそのリリシズム

青空から落ちて来る透明な雪

のようです。


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2011年12月26日

イメージクラシック「雪」その4

ハイドン 交響曲第45番嬰へ短調『告別』より第1楽章

汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 今日も風さえ 吹きすぎる(中原中也) 


 夕方の帰宅時、関東平野の空は雲がないところと不気味な黒い雲で二分されていました。の空は黒雲に覆われ、スカイツリーも巨大な黒雲をバックにすると何だか大変小さな存在のように思えたものでした。おそらく北の方は雪が降っているのだろう。に下ってくるかもしれないという不安と緊張を感じながら、僕は帰路を急ぎました。

 ハイドン交響曲第45番の第1楽章。雪がひらひらと舞い落ちて来るように、下降音型の主題が何回も繰り返されます。最初トゥッティで出た後、チェンバロがこだまのようにソロで同じ旋律を繰り返しますが、雪の厳しさを遠くから眺めている僕の立場は、このチェンバロのようなものかもしれないと思いました。

 この交響曲の第1楽章は、ハイドンの104曲の交響曲の中でも、最も強烈な印象を与えてくれる曲です。そのインパクトは古典派の交響曲においては、モーツァルト小ト短調(交響曲第25番)と双璧をなす曲ではないかと僕は考えています。『告別』というニックネームは第4楽章のエピソードから来ていますが、それ以上のニックネームをつけたくなるほど存在感があるのがこの第1楽章です。

夜には雪が降り積もっていることだろう





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2011年12月17日

イメージクラシック「雪」その3

チャイコフスキー バレエ『くるみ割り人形』より第1幕第9曲「雪片のワルツ」

 今年の東京の12月は大変冷たいです。ただ雪はまだ見かけていません。先日の夕方灰色に光るいかにも雪を降らせそうな雲を見かけましたが、冷たい風が吹き荒れるにとどまりました。雪は積もると情緒があっていいですが、鉛色の雪雲と、横殴りに吹き付けてくる雪は気分を塞がせるものがあります。

 空から降ってくる雪のほの暗い情緒を、うまく表現しているなと思うのが、チャイコフスキーバレエ『くるみ割り人形』の「雪片のワルツ」です。「雪片のワルツ」は第1幕の最後に登場する曲で、雪が降り始めてから、やがて吹雪になり、幻想的な雪の夜となって幕を閉じるというストーリーです。

フルートがほの暗い下降する音型を何度も繰り返す
嵐になったところで、少年合唱の声が幻想的に響く

などとても印象深い音楽です。バレエ組曲に入っていないので、あまり耳にする機会がありませんが、クリスマスにはぜひ聞きたい曲です。

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2011年02月13日

イメージクラシック「雪」その2

ブラームス クラリネット五重奏曲ロ短調

久々に雪が降りました。普段雪を見ない僕は雪に対して特別な思いを抱いてしまいます。地面に落ちては消えていく淡い雪に対して「名残惜しい」気持を抱くのです。冷たくて不便さをもたらす雪に理性では心配し、心では歓迎するのです。

 雪の持つ「名残惜しさ」とは不思議なもので、僕は雪を見ると、幼いころに体験した雪景色を決まって思い出します。雪と共に過去の思い出が胸の中に巡り、雪が消えると過去の思い出も余韻を残しながら消えていくのです。

 過去の甘い思い出に浸る老いた作曲家の心を、僕はブラームスのクラリネット五重奏曲の中に見ます。

クラリネットの甘い音色は思い出を
弦楽器の厳しい響きは老いの現実を


見事に表現しているように思えます。ブラームスの晩年の室内楽は晩秋を思い出させる枯れた寂しい情緒を持った作品が多いのですが、この曲は寂しさ以上に甘美さが強く感じられます。僕は雪が一面につもっている風景を見ると、クラリネット五重奏曲の第2楽章のアダージョを思い浮かべます。

第1楽章 寂しい弦楽器の主題に遅れて浮かび上がってくるように登場するクラリネットの響きがこの上なく甘美です。温和な第2主題は真冬の寒さを温める暖炉の火のような温もりがあります。

第2楽章 弱音器をつけた弦楽器の響きが、夕暮れの銀世界の静けさを連想させます。過去の思い出へ心を誘うとてもうつくしい音楽です。

第3楽章 この曲で唯一明るく軽快な楽章。それでも寂しさがひしひしと伝わってきます。

第4楽章 変奏曲。終楽章を変奏曲にすると、回想的な雰囲気が高まります。似たような効果を持つ作品として、モーツァルト弦楽四重奏曲第15番やブラームスの交響曲第4番があります。僕がこの曲を「過去の甘美な思い出を回想する曲」と感じるのも実はこの終楽章によるところが大きいのかもしれません。

タグ:ブラームス
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