2012年12月11日

イメージクラシック「冬」その9

ハイドン オラトリオ『四季』より冬

いま色あせた年が沈み
冷たい霧が降りる。
灰色の霧が山を包み
ついに平野も霧に閉ざされる。
昼だというのに、太陽は
どんよりとした光しかさしかけない。

 ハイドンオラトリオ『四季』の冬の冒頭に歌われる一節です。この短い一節の前に、短い序奏が入りますが、この序奏は初冬の霧の様子を見事に表現している印象深い音楽で、ロマン派の音楽を先取りしていると言われています。

 霧の濃さとともに、冬の寂しさと冷たさが伝わってきますが、僕は次のような短歌の情景を、この音楽から連想します。

村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ち上る秋の夕暮れ(寂蓮法師)

自然と日本の四季の風景をイメージしてしまうようです。

タグ:ハイドン
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2012年02月22日

イメージクラシック「冬」その8

スメタナ 交響詩『わが祖国』より第4曲「ボヘミアの森と草原より」

枯れた野に冷たい風が舞う
果てしなく続く冬の平原
向こうに森が見える
森の中は風がなく温かいだろうか
木々の枝は風に激しく揺れているようだが

 スメタナの連作交響詩『我が祖国』の第4曲「ボヘミアの森と草原より」を聴くと、冬の緊張したボヘミアの野原の風景が広がります。スメタナは冬の風景を描写しているわけではありませんが、チェコのボヘミア地方は北緯50度前後に位置しているためか、北緯35度前後に住む僕には冬の景色を表しているように感じます。

 曲は短調で始まり、緊張感に満ちた部分と、のどかな田舎を思わせる部分と、ボヘミアの舞曲ポルカが登場する部分があり、中欧の風土の雰囲気を表した曲としては一番手に上がる曲ではないでしょうか。



タグ:スメタナ
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2012年01月31日

イメージクラシック「冬」その7

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番二短調より第3楽章

雪と氷で閉ざされた世界
希望の光はいつ見えるのだろうか
遠い彼方にかすかに星が輝いているように見える
かすかに光が漏れる
あの氷のわずかな亀裂に
すべての可能性をかけて
僕は突破を仕掛けるその日を
息をひそめてじっと待っている

 ショスタコ―ヴィチ交響曲第5番の第3楽章は凍りつくような悲痛な感情が伝わってくる音楽です。彼がこの作品を完成したのは1937年。この年は1917年のロシア革命から約20年後のスターリンの粛清の嵐と第2次世界大戦の始まる前の不安に満ちた時代でした。共産主義はその後約70年余り続いたのでした。民主主義の現代に生きる僕から見るならば、この時代はまさに

暗黒の時代

です。そのような時代に感受性豊かな芸術家として独裁主義国家に生まれ生きていくというのは気が遠くなるほどのもどかしさがあったに違いありません。ストラヴィンスキー、プロコフィエフといった同時代の作曲家たちが外国に亡命するなかで彼はソヴィエトに留まりました。前2者の音楽には時代や体制の空気はあまり感じられませんが、ショスタコーヴィチの音楽にはそういった要素が色濃く反映されているのが特徴的です。

 弦楽器のみで続いていく悲痛さと非現実さを持った響きと、ひとり言のようにつぶやく木管の明るい小鳥のさえずり、氷の空に一瞬輝く星の光のようなトライアングルの響き、この独創的な世界を作曲者自身とても気に入っていたそうです。


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2011年12月08日

イメージクラシック「冬」その5

ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集『四季』より第4番「冬」第1楽章

つめたい雪の中の凍てつくような寒さ
吹きすさぶ荒々しい風の中を行く
絶え間なく足踏みをしながら走り
あまりの寒さに歯の根が合わない

 作曲者ヴィヴァルディヴァイオリン協奏曲集『四季』「冬」の第1楽章が表す情景を上記のように記しました。曲はタッタッタッタッという印象的な弦の刻みで始まります。馬車の音が遠くからだんだん近づいてくるようにこの刻みはクレッシェンド(次第に大きくなる)していきます。ヴィヴァルディは足踏みを表現したようですが、いずれにせよ非常に緊張感に満ちた音楽です。

 東京では12月初めから凍てつくような寒い日が続いています。外で働いていると、手はかじかみ、冷たい雨が降っていますが、まさにヴィヴァルディの表現がぴったりといった感じです。あまりの寒さに、思わず冷たいアスファルトの上で足踏みを始めてしまっています。

vfsh0164.jpg
ブリューゲル 冬



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2011年02月22日

イメージクラシック「冬」その4

シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調

 ぽかぽかした午後の陽気に野山に散歩してみたくなりました。春の兆しをみつけることを期待しながら、僕は歩きました。たんぽぽや梅のつぼみなどをみつけることができましたが、心はどうしても晴れやかな気持ちにならないのでした。

僕の心に春はいつ来るのだろうか。

 シューベルトのピアノ作品には、野山を散策しているような気分にさせてくれる作品がたくさんあります。その中でも、ピアノソナタ第21番はもっともその傾向が顕著な作品です。このソナタは、美しい歌のような旋律が滔々と歌い継がれていき、音楽が激情的になる部分が全くないのが最大の特徴です。31歳でこの世を去ったシューベルトの最後のピアノソナタであり、同時期に作曲された2つのピアノソナタより平明で、何かしら諦念のようなものが感じられます。

 シューベルトは生涯独身でした。彼の音楽には独身の孤独と、孤独を紛らす自然への温かい愛情があるように僕には思えます。また、シューベルトが自らの死を意識したかどうか、後世に生きる身として何とでも想像することは可能ですが、穏やかな湖面のように、乱れることも荒れることもなく、静かに色彩を変化させていくこの曲の根本には、深い悲しみと諦念があるように思えてなりません。




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