2012年11月17日

イメージクラシック「森」その6

マーラー カンタータ『嘆きの歌』より第1部「森のメルヘン」

静けさが覆う暗い森
まるで息をひそめているようだ

 晩秋の森は静かです。蛙や虫の鳴き声は全く聞こえず、落ち葉を踏みしめる音がざくざくと聞こえるだけで、足を止めると不気味な静寂があたりを覆います。まるで森が息を凝らして、僕の行動を監視でもしているかのように感じます。

 マーラーカンタータ『嘆きの歌』は森を舞台にした物語に音楽をつけたもので、第1部の「森のメルヘン」の冒頭では森の静けさがホルンとクラリネットによって幻想的かつ牧歌的に表現されます。この牧歌的な音楽は、すぐに不気味な半音に始まる悲劇的なクレッシェンドに打ち消され、劇的に物語の幕が開きます。この開始の部分はとても鮮烈です。
 
 この物語はマーラー自身がグリム兄弟の民話の中の素材を集めて創作したもので、次のような内容です。

第1部「森のメルヘン」兄が王位に就くため弟を殺す
第2部「吟遊詩人」吟遊詩人がその骨を拾って笛を作る
第3部「婚礼の出来事」笛の調べが真相を語り、すべてが滅びていく

 マーラーがこの曲を作曲したのは20歳の時で、まさに彼のデビュー作でした。演奏時間70分を超える大作で、すでにオーケストレーションは完成されており、のちの交響曲などにでてくるフレーズなどが何度も登場します。まさに完成された天才を感じる音楽ですが、当時の音楽界にはまったく理解されず、彼は失意のうちに指揮活動の方に専念するようになるのでした。

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ラベル:マーラー
posted by やっちゃばの士 at 21:55| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月20日

イメージクラシック「森」その5

ドヴォルザーク 交響曲第2番変ロ長調より第2楽章

晩秋の夕暮れ時
学校から帰った僕はに出かけた
家を出るときは
まだ冷たそうな青い空が見えた
森へ入ると
思った以上に薄暗く
いつの間にか僕の鼓動は高まっていた
いつも通る道順だが長く感じた
ため池の水がじっと息をひそめている
木々の間から見える西の空がうっすらと赤く染まっている
さあもう出口だ

 僕は子供のころ森の中を探検するのが好きでした。特に秋になると森に進んではいって行きました。蛇や蚊などがいない秋の森はとても親しみが持てました。夕暮れになると、西風に葉っぱが揺れるざあっという音が闇の静寂感を強めるのでした。

 ドヴォルザークの交響曲は森や草原といった自然をイメージさせてくれる音楽の宝庫です。交響曲第2番の第2楽章のアダージョは暗くて幻想的な森の雰囲気に満ちています。静寂感に満ちた弦楽器のトレモロに乗って出る木管楽器の物憂い響きは一度聴いただけで頭に印象が残る親しみやすい美しい音楽だと思います。

 この作品はドヴォルザーク24歳の時の作品で、このころに作曲された作品はあまり演奏する機会に恵まれていません。独自性がないというのが、評価を低くしている原因のようですが、メロディは本当に優れていて、作品の評価とは全く別だと思います。メロディを作る才能は、年齢や技術とは関係ないということをドヴォルザークの作品は教えてくれます。

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2011年10月19日

イメージクラシック「森」その4

シューマン 『森の情景』

休日の午後、仕事のことばかり考えていた僕は子供たちに連れられて公園に出かけました。公園の木々は少し紅葉していて、林に入ると、ザク、ザクっと落ち葉を踏む音が響きました。

松ぼっくり
どんぐり
もみじ


子供たちは「見ーつけた」と無邪気に木の実や葉っぱを集めてきます。そんな姿を眺めていると自分の心も忘れていた童心を取り戻したような気持ちになるのでした。

 シューマンのピアノ曲に『森の情景』というのがあります。秋の晴れた日の午後、森の中へ散策に出かけ、森の中の生き物と出会い、またずんずん歩いていくといった様子がとても愉快に伝わってくる作品です。曲の冒頭に、散歩の主題とも言うべき親しみやすい主題が登場しますが、この主題は曲の半ばと最後に繰り返して登場し、とても爽快な気分にさせてくれる効果を持っています。僕はムソルグスキー組曲『展覧会の絵』のプロムナードを想像してしまいます。

 シューマンは妻クララとの間に8人の子供を儲け、非常に子煩悩であったと言われています。きっと子供たちと一緒に森に出かけていく様子を想像しながらシューマンは作曲したのでしょう。


ラベル:シューマン
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2011年09月29日

イメージクラシック「森」その3

シューベルト ピアノソナタ第18番ト長調『幻想』より第1楽章

森の中を彷徨う傷ついた青年

 シューベルトピアノソナタ第18番の第1楽章。最初から最後までローテンポで進むこの巨大な楽章の音楽は、森の中を彷徨う若者の姿をイメージさせてくれます。彷徨うといっても、迷ったり、夢遊病者のように彷徨うのではなく、自ら癒しと創造の泉を感じるために、森の中に入っていくといった意味です。

 シューベルトは多くの音楽仲間には恵まれていましたが、彼の作品の真の価値を理解してくれる人と、彼を心から愛してくれる女性には出会うことができませんでした。そんな彼の慰めは自然と触れることではなかったでしょうか。僕は彼のピアノソナタを聴くたびにこのような気持ちになります。僕がこのように感じるのは、連作歌曲集『冬の旅』の影響があるからかもしれません。孤独な若者が、自然と同化していくその切々とした歌は、まさしくシューベルトの心の叫びだと思うからです。僕は20歳を過ぎてからは、『冬の旅』を聴いたことはほとんどありませんが、高校のころ何度も繰り返して聴いた『冬の旅』に歌われる若者の心と抒情は、シューベルトとの音楽の本質だと思うようになってしまったからです。

 先にも述べましたが、このソナタの第1楽章は異常にテンポが遅く、他の彼のピアノソナタと比べても異色の存在です。そこには、現実のすべての重みから解放された作曲者の自由な創造性があるように思います。自由なファンタジーと言ったところでしょうか。特に、ローテンポの第1主題の後の軽快な第2主題、第3主題は、森の中をひらひらと舞う蝶のように変幻自在で、ファンタジーの極みを感じさせます。

ラベル:シューベルト
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2011年09月28日

イメージクラシック「森」その2

ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』より第2楽章

秋の夕暮れの森は寂しい

 まだ紅葉には早いようですが、陽が暮れるのは早く、木々の生い茂った森の中は本当に早く暗くなり、寂しさが漂っています。落ち葉を踏む音だけが暗く静かな森に響きます。それでも森の香りは暖かく生きていて、すべての生き物を抱く巨大な主のように感じます。

 ブルックナー交響曲第4番の第2楽章は寂しくも温かい森を感じさせてくれる音楽です。弱音器をつけた弦楽器が寂しく暗い旋律を歌っていくのですが、不思議と温かいのです。

弦楽器の温もり
木の温もり
ブルックナーの持つ音楽の温もり


いずれもが影響しているように思えます。この第2楽章はブルックナーの美しい緩徐楽章の中では、目立たない存在ですが、この「暗くて深い森」を思わせる独特の音色は他の交響曲にはないものです。静かな森は、やがて行進を始め、自然を讃えます。自然の讃美の後は再び静かさが戻り、小鳥の声等も聞こえますが、次第に森は闇に包まれていきます。




posted by やっちゃばの士 at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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