2012年07月13日

キーワードクラシック「決意」その2

ベートーヴェン 交響曲第2番ニ長調より第2楽章

暑い夏の午後
そこはかとない不安が
僕をとらえる

 7月にしてはさわやかな風がカーテンを揺らしながら吹きこんできます。平和な風鈴の音を聴きながら、ときおりこの平和はいつまで続くのだろうかという不安が襲ってきます。先月僕は会社を辞めて事業を始めましたが、サラリーマンの時と違って、ものすごいプレッシャーです。孤独の砂漠の中で、立ち止まったら死んでしまいます。前に向かって進むしかないのです。

 ベートーヴェン交響曲第2番の第2楽章の中間部の迫りくる運命の鼓動のような音の刻みが、何度も僕の頭の中で鳴ります。この楽章は本当に美しい平和な歌謡的な旋律で有名で、おそらくベートーヴェンの交響曲の緩徐楽章の中では一番美しいのではないかと思われます。それだけにこの何か心の奥底から響いてくる強い鼓動のような中間部は非常に印象強く心に残ります。中間部の終わり、打ち続ける短調の鼓動は、激しい葛藤を得て、劇的に長調に転調するのですが、この部分は作曲者の心が悩みに打ち勝って、前へ向かって生きていこうというなあにか決意のようなものを感じさせてくれ、僕はこの部分が大好きです。

 この交響曲第2番を作曲したころ、悪化してくる難聴に悩み、ベートーヴェンは有名なハイリゲンシュタッドの遺書を書きます。ハイリゲンシュタッドの遺書には、難聴の悩みと作曲家としての使命の葛藤が生々しく綴られています。第2楽章の中間部の音楽にはハイリゲンシュタッドの遺書に綴られた思いが表れているように僕は思います。

 これから暑い夏がやってきます。僕は今までの人生で、夏に進路の決断を断行してきました。そのたびに何とも言えぬ孤独感を味わってきました。ベートーヴェンの思いに自分の心を合わせながらこの時間を走りたいと思います。

IMGP1486.JPG

posted by やっちゃばの士 at 23:51| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 決意 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月30日

キーワードクラシック「決意」その1

シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調

 思いがけない事実に遭遇した時、しばしば人は「言葉を失う状態」になります。そしてその事実が重大であるほど事実を受け入れるための沈黙の時間が長く続くものです。そして、事実を受け入れてこれから生きていく「決断」しなければなりません。僕はこの9月に2回もそのような経験をしました。

 シューベルトピアノソナタ第14番第1楽章冒頭のつぶやくような暗い第1主題を聴くと、シューベルトが何らかの重い事実に悲嘆にくれているように感じます。そして、このつぶやきの後、今度は最強奏で第1主題がもう一度姿を表します。この音楽は


決然たる響き


を持っており、シューベルトが何らかの決意をこの音楽に込めていることが伝わってきます。多作家のシューベルトですが、この曲を作曲する前の4年間彼は全くピアノソナタを作曲していません。理想のピアノソナタの形をもとめて試行錯誤していたようです。その答えがこの曲であることを考えるとこのソナタは何かとてつもなく重いものを持っていてしかるべきだと思います。

 希望が羽ばたきそうで羽ばたかず沈滞する第2楽章。嵐のようなロンドの第3楽章。僕はこの第3楽章なんか聴いているとショパン第2ソナタの終楽章を想像してしまいます。

決然と出発したが何かまだ未解決なものを抱えている」そんなこのソナタを僕は彼のピアノソナタの中で一番気に入っています。

ラベル:シューベルト
posted by やっちゃばの士 at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 決意 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。