2010年08月01日

イメージクラシック「山」A

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調

 ブルックナーの交響曲第5番は、ブルックナーの巨大な9つの交響曲の中央に高くそびえる高峰です。彼の交響曲の中で一番巨大なのは8番ですが、8番は、7、8、9と続く後期巨大交響曲群の中の一つであることを考えると、北アルプスのような山脈の最高峰に例えることができます。それに対して、5番は富士山のように単独で聳え立つ高峰であると言えます。

 立ち込めていた霧が風に流され、目の前に現れた真夏の真っ青な空に聳え立つ山頂

第1楽章の冒頭は上記のようなイメージを喚起させてくれます。僕がこの曲を山のように感じるのは、この冒頭の部分を始め、視覚的な遠近を感じさせる部分が多くあるのからです。金管楽器が山の猛々しい遠景を描いたかと思うと、木管楽器と弦楽器が山の斜面に咲いた風に揺れる花々の姿を表現します。リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲と違い、具体的に山を描写した音楽ではないので、ストーリー性はありませんが、僕はそこに山のようなものを感じます。

この曲の構成はベートーヴェンの『第9』によく似ていて、最終楽章の冒頭に、回想のように第1楽章、第2楽章、第3楽章の音楽が顔を出します。『第9』がベートーヴェンの交響曲の集大成であるように、ブルックナーは第5交響曲をそのようなものにしようと考えていたのかもしれません。第5の後、規模の小さな第6、巨大で天上をイメージさせる後期3大交響曲へと進んでいきますが、ブルックナーの音楽が表わす空間は地上から天上へとシフトしていきます。内容は深いが、気軽に聴くことのできる曲ではなくなっていくのです。そういう意味では、ブルックナーの第5は、お祭りのような楽しい気持ちで聴くことのできるブルックナー最後の大曲だと僕は思っています。

ブルックナーの交響曲の分類

第1段階 教会とステンドガラスの交響曲  第0番〜第2番
第2段階 自然と大地の交響曲       第3番〜第6番
第3段階 宇宙と天上の交響曲       第7番〜第9番


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2010年07月27日

イメージクラシック「山」@

マーラー 交響曲第3番ニ短調

 夏と言えばやっぱり「山」です。インドア派の僕は「海」よりも「山」の方に惹かれてしまいます。「夏の山で思索にふける」時間があればぜひやってみたいことのひとつです。「山ごもり」という言葉がありますが、山には人を深く考えさせる力があるようです。ニーチェのツラトゥストラも山に10年間こもって思索にふけったのでした。

 夏になると山の小屋にこもって創作する作曲家がいました。マーラーです。彼は今では作曲家として有名ですが、生前は指揮者としてほとんどの時間を過ごしました。作曲するためにまとまった時間は、夏休みしかなかったのです。

 交響曲第3番の第1楽章の冒頭、8本のホルンが壮大な音楽を奏でます。この部分は「山の険しい頂」をイメージさせます。「夏休みが来て、山で創作にふけることができる」というマーラーの喜びと期待感がいっぱいに詰まった音楽です。この第1楽章はマーラーの交響曲の楽章の中では最も長大で、この交響曲の基盤となります。その後の小さな楽章で、一つ一つのテーマについての思索が行われていきます。全部で6楽章、標題をつけるなら「山の哲学交響曲」とでも言えるでしょう。

 この交響曲は、マーラーの交響曲の中で、最も幸福感に満ちた交響曲で、ぜひ夏休みに聴きたい曲だと思います。

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