2012年05月31日

イメージクラシック「五月」その6

ブラームス 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調より第1楽章

会社を辞めて半月が経ちます。この期間は夢のような期間でした。悠々自適に家族とともに過ごせたのは10年ぶりでしょうか。5月最後の思い出に、5月らしい幸福感に満ちた曲を挙げたいと思います。

 ブラームス弦楽六重奏曲第1番の第1楽章は、ブラームスの室内楽の中で最も幸福感に満たされた音楽です。

明るい若葉のようにさわやかで温かい第1主題
のびやかで幸福感に満ちた第2主題

そしてこの楽章で効果的に使われる2本のチェロの温かい響きがとても印象的です。

 この曲が作曲されたのは、シューマン家と離れたデトモルト時代です。午前中は作曲、午後は合唱団の指導と、とても平和で穏やかな日々を彼はこの時期に過ごしたようです。

ラベル:ブラームス
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2012年05月28日

イメージクラシック「五月」その5

ベートーヴェン 交響曲第2番ニ長調より第1楽章

 ついこの間まで咲いていた美しい花々は、いつの間にか姿を消し、どこもかしこも緑がものすごい勢いで生い茂るばかり、5月の新緑の成長の速さには目を見張るものがあります。

 ベートーヴェン交響曲第2番の第1楽章は、勢いよく生長する新緑のような魅力を持った音楽で、5月になると必ず聴きたくなる曲のひとつです。

期待感に満ちたワクワクするような序奏
ぐいぐいと推進力のある第1主題
雄大で伸びやかな第2主題

第3番『英雄』のように巨大な曲ではありませんが、小粒な体の中にはち切れるようなエネルギーが満ち満ちていて、「小さな英雄」というニックネームで呼んでもおかしくない曲だと思います。この交響曲を作曲した当時、ベートーヴェンは難聴に悩み、有名なハイリゲンシュタットの遺書を書きます。このハイリゲンシュタットの遺書とこの曲の関係を考えることは、とても興味深いです。

 この曲の特徴をより深く感じるために、僕は交響曲第1番、第2番、第3番『英雄』の三曲をセットで聴くのがいいと考えています。僕はこの三曲の関係を、

@第1番 蘇生レベル ホップ
A第2番 成長レベル ステップ
B第3番 完成レベル ジャンプ

と考えるからです。ベートーヴェンの交響曲は、第3番『英雄』でひとつの頂点に達し、第4番からは方向の転換を図ります。そのように考えた時、成長期にある第2番の占める位置は大変重要な位置になってきます。なぜなら、成長期は人間で言えば思春期にあたり、ここでは必ず激しい葛藤を経験するからです。成長期の戦いで得たものが、完成期の果実になるのです。僕はハイリゲンシュタットの遺書とこの2番が同時期になっていることに単なる偶然以上の価値を見出します。

 
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2011年05月14日

イメージクラシック「五月」その4

シューマン ピアノ五重奏曲変ホ長調

 1年の中で最も幸福感に満ちている月はいつかと問われれば、おそらく多くの人が五月と答えるのではないでしょうか。生命力に溢れたこの月は、新鮮で前向きな気持ちにしてくれる力を持っているように思います。

新緑の野原を駆けていく白馬

のような気分で前進したいものです。

 シューマンピアノ五重奏曲は、まさにこの白馬のような躍動感と、白馬の澄んだ目が見ているような夢心地感をもった作品です。シューマンがこの曲を作曲したのは1842年。クララと結婚した1839年から後の3年間はシューマンの人生で最も幸福に満ちた期間で、それまでピアノ曲しか作曲していなかったシューマンは、1年ごとに他のジャンルの傑作を堰を切りだしたように作曲したのでした。

1840年 「歌の年」『詩人の恋』、『リーダークライス』、『女の愛と生涯』等
1841年 「交響曲の年」交響曲第1番『春』、交響曲第4番
1842年 「室内楽の年」ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲、弦楽四重奏曲

 ピアノ五重奏曲は、シューマンが作曲した初めての本格的な室内楽作品で、まさに長年貯めていたエネルギーが一度に爆発したような勢いを持っています。実際、シューマンはわずか数週間でこの曲を完成させました。ちょっと荒削りで緻密さに欠けるところがありますが、躍動感とシューマン独特の夢見るような曲想がそういった欠点に勝っており、この特徴が、彼の室内楽の最高峰と僕が思っているピアノ四重奏曲よりも、人気が高い所以だと思います。5月のこの季節になると決まって聴きたくなります。




ラベル:シューマン
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2010年05月31日

イメージクラシック「五月」B

シューマン 幻想曲ハ長調

 五月最後の一日。快晴の青空のもと、公園では子供連れの家族が木陰に座って楽しそうにしている。明るい光の中を強めのそよ風が駆け抜けていく。この一時の幸福な時間がずっと続くことを願いながら、青空に顔を向けて寝っ転がり目を閉じた。

 上記のような思いになったことがある人は多いのではないでしょうか。こんなシチュエーションにあるとき、僕はシューマンの幻想曲を目を閉じて心の中で聴きます。

 シューマンの幻想曲は、作曲者がまだクララと婚約中だった時に作曲されました。この作品はシューマンのピアノ独奏曲の中で最も幸福感に満ちた作品です。クララの存在はシューマンの創造の泉そのものだったのでしょう。この時期には、『子どもの情景』や『クライスレリアーナ』などシューマンらしいファンタジーに満ちた傑作が立て続けに作曲されています。シューマン自身この作品を最高傑作と評したようですが、僕もシューマンのピアノ曲の中で最も優れた作品は、この曲と交響的練習曲だと思います。

 曲は幻想曲としては、他のどの作曲家のものよりも規模が大きく、3楽章からなります。

第1楽章 冒頭の夢見るようでいて情熱的な主題は一度耳にしたら忘れられない名旋律です。

第2楽章 『謝肉祭』の終曲のように勝ち誇った曲。行進曲風の曲想はシューマンがよく使う手です。

第3楽章 始まりよりも曲の終わりが最も印象深い。永遠に憧れの対象を夢見続けているような余情が残ります。

 ところで、この曲は『大ソナタ』として出版される予定であったためか、モーツァルトやショパンの幻想曲とはずいぶん趣が異なります。彼らの幻想曲はどちらかというと暗い陰的なイメージがありますが、シューマンのものは明るい野原に飛ぶ蝶のようなイメージです。



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2010年05月23日

イメージクラシック「五月」A

ブルックナー 交響曲第2番ハ短調

暗い教会から明るい自然へ。ブルックナーの交響曲第2番は、第4番、第5番と並んで、自然の情景が目に浮かぶ田園交響曲です。

 ブルックナーの交響曲は、どの曲も聴いただけで「あっブルックナーだ」と素人でもわかるぐらい似たような特徴を持っています。しかし、よく聴いていくと作曲者の視点が番号とともに変化していくことに気づくはずです。

 ブルックナーの交響曲の原点はミサ曲にあります。ブルックナーはミサ曲を3曲作曲し大成功をおさめます。彼は次に交響曲の作曲に取りかかり第1番を書きあげます。この第1番には後のブルックナーの交響曲に見られるような息の長い音楽を見出すことができません。ミサ曲で聴かせた美しい音楽も生かされていません。ブルックナーは「ばか者のように第1番を作曲した」と述べていますが、この言葉の裏には満足できない思いがあるように思います。

 続いてニ短調の交響曲(第0番)を作曲します。このニ短調交響曲は第1交響曲よりもブルックナーの個性がよく表れており、美しいミサ曲の旋律も登場するなどブルックナー的です。ただ、メリハリが乏しく盛り上がりに欠けるためなのか、この交響曲は「けちょんけちょん」にけなされて、ブルックナーは本来このニ短調交響曲を第2交響曲として発表するはずでしたが、「全くくだらない作品」として自らお蔵入りにしてしまいます。その後新たに作曲されたのがこの交響曲第2番ハ短調です。

 この第2交響曲は、それまで教会のステンドグラスの中で作曲していた作曲家が、田園に出かけて初めて作曲したかのように

さわやかな響き

を持っているのが特徴です。曲は短調で始まりますが、明るい響きを持っており、第1楽章の冒頭の弦楽器のトレモロは

5月の風に揺れる若葉の動き

のような新鮮さを持っています。またこの曲はブルックナーの交響曲の中で最も歌謡的な要素の強い曲でもあり、歌心に満ちた名指揮者カルロ・マリア・ジュリーニが後期3大交響曲とこの曲のみ録音を残していることは象徴的です。

 おそらくこの曲において、ブルックナーは初めて納得できる手ごたえのようなものをつかんだのではないでしょうか。自然界がすくすくと成長していく姿を目の当たりにする五月に、ぜひこの曲を聴いてみるのがいいのではないかと思います。

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