2012年10月14日

イメージクラッシック「夢」その10

シューベルト ピアノソナタ第16番イ短調より第1楽章

静寂、孤独、沈黙 そして夢

 秋の澄んだ冷たい空気に触れると、シューベルトのピアノソナタを聴きたくなります。夕闇に一艘映える紅葉と沈黙する林は静けさに包まれ、いつものと同じように時は流れていきます。

 シューベルトのピアノソナタ第16番の第1楽章は、同じイ短調のピアノソナタ第14番とよく似た雰囲気を持っています。ピアノソナタ第14番はなにか強い決意と悲壮感が漂ってくるのに対して、この16番は暗い森の情景のようなロマン性を持っているのが特徴です。
 
 展開部で、第1主題がフォルテになるところは、何か夢か幻を見ているような迫力があり、沈黙の多いこのピアノソナタの中でとても印象的です。このソナタはシューベルトのソナタの中でも、珍しく生前に評価されたものですが、彼はどのような気持ちでこの曲を作曲したのだろうかと思わされます。

posted by やっちゃばの士 at 11:40| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月08日

イメージクラシック「夢」その9

リムスキー=コルサコフ 交響組曲『シェエラザード』より第3曲「若い王子と王女」

夏の午後うとりうとり
夢に見る揺れる船遠い国

 暑い夏の午後、風のよく通る畳の部屋に寝そべるととても気持のいいものです。そのままいつの間にか眠ってしまうことも多いのではないでしょうか。

 畳の上で目を閉じながら、聴きたい曲がリムスキー=コルサコフの代表作である交響組曲『シェエラザード』の第3曲「若い王子と王女」です。この第3曲はシェエラザードの中で最も優雅な楽章で、美しい夢見るような歌謡的な旋律が繰り返されていきます。この主旋律の伴奏はまるで揺れる波のようで、深い夢の世界へ聴き手を誘います。

 夏の暑い日の午後にお勧めの一曲です。



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2011年12月24日

イメージクラシック「夢」その8

チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より第1幕第8曲「冬の松林」

 寒いクリスマスイヴとなりました。日暮れ間近になると冷たい風が吹き荒れ、わくわく感よりも現実の厳しさを感じてしまうところです。「夢」からは程遠い現実ですが、程遠いからこそ「夢」なのかもしれません。「夢」が簡単に実現できてしまったら、そこには感動がないでしょう。また「夢」は極限の中で、不意に訪れるものだとも思います。予測できないからこそ「夢」だということが出来ると思います。

ふと外を見ると辺り一面が夢のような銀世界
月の光がやさしく包み込む
松の冷たい針葉が白い帽子をかぶっている

チャイコフスキー『くるみ割り人形』の「冬の松林」は、夢の国の入口の感動を伝えてくれる曲です。ハープの美しいアルペジオに続いて、ほのかに哀愁を帯びた旋律が、まるで雪が降り積もるように反復しながら次第に盛り上がり、やがて「雪片のワルツ」へと続いていきます。

「冬の松林」は『くるみ割り人形』の中で最も感動的な部分の一つだと思います。この部分は、第2幕「お菓子の国」への導入部分に当たりますが、現実から夢へ、戦いから勝利へというストーリーの流れで考えた時、やはり変わり目の部分が一番新鮮で印象が強いのでしょうか。第2幕に入ってからは、有名な踊りが何曲も登場しますが、バレエの場合、踊りを見せる芸術であるため、夢に入ってしまうと音楽が楽しいけれども多少単調に感じられてしまう要素があるように思います。

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アンバサダーホテルにて

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2011年11月16日

イメージクラシック「夢」その7

エルガー 交響曲第1番イ長調より第3楽章アダージョ

秋の終りの午後長大な夢

 冷たい空気に冬の訪れがすぐそこまで来ていることを感じるようになりました。温かい秋はもう過ぎ去ろうとしています。自然のサイクルとはいえ、名残惜しさを感じてしまいます。青い空の冷たさを感じながらも、ベランダの陽だまりでいつの間にかうとうとするのでした。

 エルガー交響曲第1番の第3楽章のアダージョ。ちょっとうつろな響きを持っていて、なんだか夢の中で聴いているような音楽です。静かな寂しさと名残惜しさが、打ち寄せる波のように、午後の昼の夢の浜辺に響きます。何度も繰り返される虚ろな下降する旋律が、非現実的な印象を一層強くしています。

 エルガーがこの交響曲を作曲したのは、50歳を過ぎてからのこと。シンフォニストとしては非常に遅いキャリアです。この交響曲は、エルガー初めての交響曲であるとともに、偉大な交響曲が音楽史上まったく生まれなかったイギリスの第1交響曲であるとも評されています。エルガーの作品には、オラトリオ『ケロンティアスの夢』や、ピアノ五重奏曲弦楽四重奏曲のアダージョのように、夢現な印象を与える作品がたくさんあります。


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2011年11月07日

イメージクラシック「夢」その6

ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集『四季』より第3番「秋」第2楽章

暖かい午前の光に包まれていつの間にか僕は眠りに落ちたのでした。田舎では今頃みかん狩りの季節をむかえていることだろう。子供のころ瀬戸内海に面したみかん山にかごを持ってよく登ったこと、みかん山の小さな荷物用ケーブルに乗ったこと、過去の思い出が夢の中に出て来るのでした。潮風は今よりもちょっと肌寒い・・・。

黄色く香るみかん山
穏やかに輝く瀬戸の波
吸い込まれそうな青い空

 秋の深い青空を眺めて目を閉じると、別の青い空が広がる世界が見えて来るのでした。僕の体はすっぽりと僕の体から抜け出してその世界に向かおうとするのでした。

 ヴィヴァルディ『秋』の第2楽章の神秘的なアダージョは、異次元の世界へと僕たちを誘います。ひらひらと振ってくる光の粒のようなチェンバロの伴奏の上に、弱音で奏される弦楽器のハーモニーの神秘さはこの世のものとは思えない不思議な音楽です。

 ヴィヴァルディは楽譜に次のような短詩を書き込んでいます。

一同が踊りと歌をやめた後は
秋の穏やかな空気が快い。
そしてこの季節は甘い眠りで
すべての者を気持のよい憩いへと誘う。


Brueghel11.jpg
ブリューゲル 秋


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