2011年06月20日

イメージクラシック「夕暮れ」その3

ベルリオーズ 『幻想交響曲』より第3楽章「野の風景」


遠雷やただひとり聞く静寂の調べ漂う夏の夕暮れ

夏の夕べにおそらく多くの人が一度は体感する世界ではないでしょうか。特に物事を深く考える時間のある少年時代から青年時代にかけて、そのような体験をしたことが多いのではないかと思います。


孤独感と不安感
夕闇の中に紛れていく憂鬱な思いと明日への期待感
 
 ベルリオーズの『幻想交響曲』の第3楽章「野の風景」は、まさにこの夏の夕べに誰しもが体験する絵のような風景の中で、ある若い芸術家が憧れの人のことで思い煩う心情を音楽にした作品です。コーラングレとオーボエで奏される羊飼いの牧歌は、傷ついた青年の心を癒しますが、一方でしのびよる静寂感が青年の心をますます孤独にします。暮れていく美しい野山に吹くさわやかな風は、はるかなる意中の人への思いを募らせます。

 この第3楽章では、ロマンティックさとシュールさが同居した不思議な音楽の世界が繰り広げられますが、僕は幻想交響曲の中では、この楽章第1楽章「夢と情熱」が、ロマン性と非現実性の両方がうまくマッチングされていて、とても気に入っています。曲の最後、再び静寂感が主人公を包みますが、時折顔を出す遠雷の響きが、主人公の不安を煽り、やがて来る主人公の破滅を予兆します。

 ベルリオーズの作品には、夕暮れ時の雰囲気を表現したものが多くあり、交響曲『イタリアのハロルド』の第2楽章や劇的交響曲『ロミオとジュリエット』の舞踏会の前の音楽などがあります。おそらく、劇的なストーリーを展開させるに当たって、夕べの場面は重要なファクターだと彼は考えていたのではないでしょうか。

 
ラベル:ベルリオーズ
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2011年06月12日

イメージクラシック「夕暮れ」その2

サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」より第1楽章第2部

オレンジ色に染まった雲が初夏のそよ風に乗って西から東に次々と流れてくる。日没までにはまだまだ時間があるが、この雲の色づきのなんと鮮やかなことだろう。まるで神々の乗った船が流れてくるようだ。

 このさわやかなオレンジ色の雲の行進は、初夏から梅雨の季節にかけてのみ見れる景色です。僕は今39歳ですが、少なくとも僕が今までの人生の中でこの景色に出会ったことがあるのはこの季節しかありません。中でも鮮烈な体験をしたのは、高校2年生のときです。夕方部屋の中で寝っ転がっていましたが、窓の外があまりにもオレンジ色に見えるので、外に出てみたのです。空を見上げるとあまりにも神々しい風景が広がっていました。僕は東の海の方に向かって伸びる田圃道を雲の流れとともに歩いて行きました。

 僕の頭の中に浮かんだ音楽が、サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付」のアダージョです。オルガンの神々しい響きの上に歌われる牧歌的な旋律の何と美しいこと。「牧歌的」に「流れるような」美しさがこのアダージョの大きな特徴だと思いますが、このような美を感じさせてくれる音楽は他の作曲家の作品にはないのではないでしょうか。風景が音楽の美しさを改めて感じさせてくれる体験を僕はこの時にしたのでした。

 暮れていく西の空に浮かぶ雲は、オレンジの光を失い、炭のようにまっ黒になって、かすかに端の方だけがかすかにオレンジ色に光っていました。辺りはすでに闇に覆われようとしていましたが、消えかかりの火がくすぶり続けるように、雲の端はかすかにピンク色に染まっていたのでした。僕はこの瞬間がとても貴重なものに思えました。アダージョの後半、それまでの流れるような旋律が停滞し、闇に包まれていく部分が重なって響いてました。

 美しい夕暮れの音楽。サン=サーンスのアダージョと共に、この季節になると、またあの美しい光景に出合うことが出来ないかと晴れの日の夕方の空を僕は見上げることが多いです。

ラベル:サン=サーンス
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2010年04月06日

イメージクラシック「夕暮れ」@

ショパン バラード第1番ト短調

 夕闇に包まれていこうとする暗い自室の机にたたずみ、真っ暗なカーテンのかかった窓の向こうに溶鉱炉のように黒ずんでいく夕焼けの空が見える。暗闇にただ一人この世から取り残されたような孤独感。カラスの鳴き声がむなしく響いてくる。


 ショパンのバラード第1番の冒頭の序奏ほど、夕闇のひと時にぴったりくる音楽があるでしょうか。


闇から浮かび上がる自らの存在

の姿を彷彿とさせる音楽があります。この短い序奏はショパンの数ある名旋律の中でももっとも印象深いものだと思います。巧みな転調によって「浮かび上がるような」あるいは「揺れるような」不思議な感覚にさせてくれる見事な音楽です。

 続く主題部は、歌に満ちた情緒的な音楽で、心に残る旋律の宝庫です。ショパンはバラードを全部で4曲作曲していますが、おそらくこの曲が一番心に残る名曲ではないでしょうか。シューマンが「一番好きなバラード」と呼んだのは有名な話です。

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