2012年02月08日

キーワードクラシック「卒業」その5

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調より第4楽章

 もうすぐ卒業の季節です。卒業式でかけるにはちょっと派手でヘビーですが、僕の頭の中で卒業のイメージにぴったりくるのが、チャイコフスキー交響曲第5番の終楽章です。

回想とお祭り気分の卒業式

といったところでしょうか。この終楽章は、序奏―主部―コーダで構成され、序奏では、第1楽章で登場しその後の楽章でも度々顔を出す「運命の主題」といわれる暗い主題が、長調で明るく伸びやかに歌われます。苦難の数々を乗り越えたあとの充実感が伝わってきます。この部分は「卒業式」でも使えると思います。

 その後激しい主部に入っていきます。この主部のリズムはとても印象的で、
 
イタリアのサルタレロとブラジルのサンバ

を足したようなお祭り的な音楽です。まるでそれまでの思い出が、ものすごいスピードでスクリーン上に走馬灯のように早送り再生されていく感じでしょうか。曲の情緒はチャイコフスキーらしく抒情性に富んでいます。僕がこの曲に対して回想的だと思うのはこの抒情性に原因があると思われます。

 コーダでは序奏の「勝利した運命の主題」が高らかに歌われ感動的に曲を締めくくります。やはり「卒業」で聴きたい名曲です。


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2011年03月31日

キーワードクラシック「卒業」その4

メンデルスゾーン 交響曲第5番ニ長調『宗教改革』より第4楽章

僕がこの文章を再び書きだしたのは今日31日になってからです。3.11の大地震から時間は止まり、過去から断絶した世界に入ったような気がします。クラシック音楽について今書くことに何の価値があるのかという思いがふつふつとわいてきて文章を書くことができませんでした。

 僕の住む浦安も、液状化で大きな被害を受け、娘の通う小学校、幼稚園は断水で登校もできなくなりました。南国風の美しい町並みは、砂埃と地割れによる乾いた街並みになってしまいました。日に日に復興していく街の姿を眺めながらふと「卒業式はどうするのだろう」という思いが浮かびました。

 もともと「卒業」というキーワードで書こうと思っていましたが、3.11以降「卒業」の重みが変わってしまいました。東北の被災地の卒業式の映像を見ると涙が流れてくるように、涙なしでは今年の「卒業」は語れないと思っています。

 今回、「卒業」にふさわしい音楽としてメンデルスゾーン交響曲第5番の終楽章を挙げたいと思います。この交響曲は、メンデルスゾーンが20歳過ぎのころ作曲したもので、実際には彼が世に出した2番目の交響曲となります。『イタリア』や『スコットランド』の陰に隠れて目立たない存在ですが、メンデルスゾーン特有の洗練された雰囲気建築物を思わせる立体的な構成情熱的な力強さを持った力作で、僕は傑作だと思っています。『宗教改革』という標題は、ルターの生誕300年祭のために作曲されたことからついたもので、個の曲にはユダヤ人として迫害を受けてきたメンデルスゾーンの内的な葛藤と信仰がこめられているように思います。

 第4楽章は、ルターが作曲したコラール『神はわがやぐら』をフルートが奏しながら始まります。この冒頭の賛歌は平和と春の訪れを告げるような印象的な響きを持っています。このコラールの後、音楽は荘厳な建築物を思わせるような響きに変わり、対位法的に展開していきます。この喜ばしく荘厳な音楽は卒業式にぴったりではないかと僕は思います。

 メンデルスゾーンは一般的には裕福な家庭に生まれて何一つ不自由のない人生を送った作曲家として紹介されることが多いですが、実際は終生ユダヤ人として世間から迫害を受け続けました。この交響曲もユダヤ人作曲の曲ということで、演奏を拒否され続け、メンデルスゾーンの生前にこの曲が演奏されたのは1回だけでした。僕はメンデルスゾーンという人は、自分に厳しい人で自分の感情を余り音楽に出さないタイプの人ではないかと思います。この明るく平和な音楽の背後には、作曲者の特別な強い思いがあるように思えてなりません。

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2011年03月09日

キーワードクラシック「卒業」その3

グリーグ 組曲『ホルベアの時代から』より第4曲アリア
 
 たけなわの春より一足早く、卒業の春が今年もやってきました。今年も多くの涙が卒業式で流れることでしょう。

 さて、この涙の卒業式のムードを、この上なく高めてくれる音楽があります。グリーグ組曲『ホルベアの時代から』第4曲アリアです。『ホルベアの時代』は弦楽合奏で、軽快な5曲の短い楽章からなる組曲です。その中でも第4曲アリアの持つ、ほの暗く、かなしみに満ちていて、それでいてさわやかで格調高い曲想は卒業のムードにぴったりです。

 ホルベアとは、グリーグの時代から200年ほど前に活躍した、グリーグと同じノルウェーのベルゲン出身の作家の名前のことです。1884年、グリーグはホルベアの生誕二百年祭のために、この組曲を作曲したのでした。格調高く、端正なこの組曲の特徴は、このように記念式典のために書かれたことが大きく関係しているようです。そういう意味でも、この曲は卒業式にマッチしていると思われます。

 この曲はもともとピアノの独奏曲として作曲され、後で作曲者自身が弦楽合奏に編曲しました。原曲のピアノの方も捨てがたい魅力がありますが、厳かな式典にはやはり弦楽合奏の方がふさわしいでしょう



 
ラベル:グリーグ
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2010年03月20日

キーワードクラシック「卒業」A

ショパン 12の練習曲op10より第3番ホ長調『別れの曲』

 昨日は長女の幼稚園の卒園式でした。市場感動したのは、園児たちの退場でした。袴姿の先生に続いて園児たちが順々に退場していきましたが、健気な園児たちの表情とは対照的に、先生たちはみんな泣いていたのが印象的でした。

 やはり卒業(園)式の最後にはが似合います。元気で堂々とした行進曲は入場曲としてはふさわしいけど、退場の時はしみじみとした曲がふさわしい。こんなときはやはり


ショパンの『別れの曲』


なんてBGMでかけたら、泣けてしようがないと思います。

 有名なショパンのこの曲の表題は、ショパン自身が名づけたものではなく、『別れの曲』というタイトルの映画にこの曲が使われたのが由来です。ショパンは若くして別れた故郷ポーランドへの想いをこの曲にこめて作曲しているので、このタイトルはほぼ的を得ていると思います。

 ところで、この曲が含まれている練習曲ですが、この別れの曲のような楽想を持つ作品は他にはありません。『夜想曲』(ノクターン)のように甘い調べの集まった曲集を期待すると裏切られます。

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2010年03月07日

キーワードクラシック「卒業」@

ショパン 即興曲第4番ハ短調『幻想即興曲』 

 もうすぐ卒業式のシーズンを迎えます。卒業式では、ワーグナーの『ニュルンべルグのマイスタージンガー』前奏曲のような壮麗にして品のある音楽がバックミュージックとして使われます。一方、「卒業式」とは違って「卒業」という言葉から人はどんなイメージを抱くでしょうか。


惜別
もう戻らない過去の思い出


晴々しい気持ちを抱くのが「卒業式」なら、ほろ苦くも甘い思い出をそっと心の箱の中に整理するのが「卒業」です。特に小学校、中学、高校を卒業する時に多くに人がこんな感情を抱くのではないでしょうか。


 僕は卒業というと、ショパンの『幻想即興曲』が浮かびます。この曲の持つ楽想が、卒業の時に抱く、過ぎ行く時間と、遠ざかる思いでに対するいとおしい気持ちにマッチするからではないかと思います。また、この曲はショパン25歳という若い時の作品で、透明感のある抒情を感じさせるところがあるのも「青春」にふさわしいと思います。

 『幻想即興曲』はショパンのピアノ曲の中でも大変有名な曲で、編曲も多く、フィギアスケートでもそのオーケストラ版が使われていました。しかし、この曲主題提示部と再現部の「」がものすごいスピードで失われていくような緊迫感と、中間部の思い出に浸って恍惚とした感情が浮かび上がるような音楽は、ピアノで演奏されてこそ味わうことができるものです。






 
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