2011年11月19日

イメージクラシック「雨」その12

フォーレ ピアノ5重奏曲第1番二短調より第1楽章

晩秋の夕暮れ時闇にすっぽりと覆われた静かな車中
フロントガラスに
次々当たってはじける雨は
街灯のオレンジ色の光とまじりあって
泣きはらした顔のように
ぐちゃぐちゃになっている
昔見た絵画のような映像
船頭の歌が懐かしく響く
やがて雨上がりの朝を迎えるだろう

 フォーレピアノ五重奏曲第1番の第1楽章。冒頭から続く美しい分散和音は、天から落ちてガラスに当たってはじける雨粒のようです。とても透明度が高いきらきらとガラスのように光る雨粒です。分散和音に続き、弦がしっとりとした音楽を、雨に煙る霧のように重層的に響かせます。悲しみの雨はやがてやみ、光が差し込んできます。

 フォーレがこの曲を作曲した当時、彼は聴覚障害に悩まされていたのでした。おそらくフォーレの心の中には涙の雨が降っていたにちがいありません。現実の涙は暗くて悩ましいものだと思いますが、フォーレはこの心の中の風景を、芸術作品に昇華することによって、結晶のような美しい響きを持った世界に変えたのでした。

 フォーレの音楽の特徴は「しっとりとした夢幻的」抒情を持っていることで、僕は「」をイメージする曲として何曲か今までに取り上げてきましたが、この曲ほど「美しい雨」の抒情を感じさせてくれる作品はないと思います。この曲はあまり演奏されないようですが、音楽的にも抒情的にも彼の室内楽作品の中で最高の位置にふさわしい作品です。


ラベル:フォーレ
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2011年06月09日

イメージクラシック「雨」その11

サン=サーンス ピアノ協奏曲第4番ハ短調

 今日は久々に雨のち曇りの一日でした。ここのところずっと、午前中は晴れていたけど、午後から雲行きが怪しくなって、夕方前には雨がぽつぽつと降り出す日が多かったのですが、今日は午後から明るい日差しが青空の間からこぼれ、美しい夕焼けが長く西ぞらに留まっているのを見ることができました。夕焼けの光が、雨上がりの庭をさわやかに照らし続けます。

6月の雨上がりの庭にはみずみずしい情緒があります。サン=サーンスピアノ協奏曲第4番の第1楽章第2部のアンダンテはそんな雨上がりの庭のさわやかさを感じさせてくれる音楽です。この楽章の第1部から第2部へ移行する部分は、暗い雨空の雲が割れて、光が差し込み、次第に雨が上がっていくような雰囲気を持っています。華麗なピアノと甘い木管楽器と静寂な弦楽器が、甘美な庭の情景を作り出します。

 上記のイメージは僕の勝手な想像ですが、サン=サンースのこの曲は本当に華麗で上品で親しみやすく、同時に構成が練られていて大変聴きごたえがあります。曲の構成は交響曲第3番ハ短調「オルガン付」と本当によく似ていて、2つの楽章からなり、各楽章の第1部が短調で非常によく似た雰囲気を持っているのも交響曲第3番と同じです。この構成は、よく似た主題(循環主題)を繰り返すことによって、曲に親近感を持たせることに大きく役立っていると思います。

 この曲の最終部である第2楽章の第2部も、交響曲と同じく華麗で堂々とした行進曲風の音楽が展開されます。ただ、勝利感を歌いあげる交響曲と違って、こちらは夜の華麗な舞踏会といった雰囲気が強いです。雨上がりの私邸での楽しい舞踏会といった感じでしょうか。



ラベル:サン=サーンス
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2011年05月30日

イメージクラシック「雨」その10

ラフマニノフ 交響曲第2番ホ短調より第1楽章

 丸2日間雨が降り続き、2日目の晩を迎えようとしています。相変わらず空はどんよりと曇り、いつもより早く点灯した街灯のオレンジ色の光が濡れた路面を寂しく照らします。救いようのない暗さではないが、どこまでも続いていく濡れたオレンジ色の光のトンネルの中を目指すべき目標に向かって歩いて行くのは憂鬱なものです。

 ラフマニノフ交響曲第2番の第1楽章の陰鬱で長大な序奏。雨の夜のオレンジ色の光を見ると、僕の心はこの陰鬱な情緒を持つ音の波に包まれていきます。憂鬱だが心地よいこの音楽は、まるで次々と押し寄せてくる波のように、心に打ち寄せて響きます。乾いた痛みを何度も何度も包みこもうとする癒しの波のようです。

 ラフマニノフがこの交響曲を作曲した時、彼の創作意欲はとても旺盛で、ピアノ協奏曲第2番で得た作曲家としての自信にも満ち溢れ、この曲を一夏で書き上げたと言われています。と同時に、この交響曲には彼の並々ならぬ思いが込められているようにも思います。交響曲第1番の初演の大失敗により彼の心は大きな傷を受け、作曲をすることがほとんどできなくなってしまいました。そんな彼にとって交響曲での成功は悲願であったに違いありません。

 交響曲第1番の初演大失敗による苦しみから次第に立ちあがり、自信を取り戻していく彼の歩みそのものがこの交響曲第2番に描かれていると僕は思います。陰鬱だが癒しに満ちた夜の雨のように豊かな抒情を降り注ぐ名曲です。





 

 
ラベル:ラフマニノフ
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2011年05月20日

イメージクラシック「雨」その9

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番ト短調より第2楽章

 夜も更けて、ひっそりと一人外へ出る。街灯の明かりに霧のような雨が白く光っている。5月の雨は冷たくはないが、汗ばんだ額を冷ましてくれる。悲しさと同時に心地よさを感じる。目標に向かって真っすぐに進めない停滞した自分を、少し離れた位置から見てみると。

 ブラームスピアノ四重奏曲第1番の第2楽章インテルメッツォ(間奏曲)は

悲しみと快感

が混じった不思議な音楽です。短い曲ですが、曲の最初から最後まで続く弦のシンコペーションは、執拗に降り続く雨のようで、悲哀な曲想に独特の緊張感を与えます。この緊張感は大変心地よく、この曲は何度聴いても飽きが来ない不思議な魅力を湛えていると思います。

 この曲はブラームスが20代半ばの時に作曲されましたが、シューマンの死んだ1856年から大作『ドイツ・レクイエム』で大作曲家の仲間入りをする1868年までの約10年ちょっとの間に、優れた室内楽作品をたくさん残しています。この時期の作品は、才気あふれるシャープな独創性と、内向的にメラメラと燃える暗い情熱と、長大な音楽とがっぷりと組む若々しさに満ちていて、とても聴きごたえがあります。



ラベル:ブラームス
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2011年05月11日

イメージクラシック「雨」その8

フォーレ ヴァイオリンソナタ第1番イ長調より第4楽章

しっとりとしたピアノの響き
幽玄夢幻の抒情
繊細な無数の線にちりばめられていく音


を連想させるフォーレの音楽は、新緑の街に降りかかる雨の抒情によくマッチします。

激しく降る雨
しとしとと降る雨
ぱらぱらと降る雨

 
 既に「激しく降る雨」っをイメージさせる音楽として、フォーレチェロソナタ第2番のエレジーを挙げていますが、今回は「しとしとと降る雨を窓から眺めて過ごす午後」にぴったりくる曲としてヴァイオリンソナタ第1番第4楽章を挙げたいと思います。

 ヴァイオリンソナタ第1番は、先回の記事で取り上げたように素晴らしい第1楽章を持つ名曲ですが、その他の楽章も非常にフォーレ的な独創性に満ち溢れた傑作です。第4楽章の冒頭に表れるシャンソンを彷彿とさせる抒情的な旋律は、雨の日に窓辺で外を眺めながら何気なく歌いだしたくなるような雰囲気を持っています。この雰囲気というのは、童謡にある「雨雨降れ降れ母さんが・・・」という子どもが雨の日に感じるわくわく感に通じるものがあるように思います。

ラベル:フォーレ
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