2012年06月14日

イメージクラシック「雨」その17

フォーレ ピアノ五重奏曲第2番ハ短調より第1楽章

霧のように煙る雨
かすかに光が差し込み
幻が浮かび上がる

 フォーレピアノ五重奏曲第2番は、作曲者70代半ばにあって聴覚障害と闘いながら作曲した作品です。前にこのブログで取り上げたピアノ五重奏曲第1番と比べると地味な印象がありますが、霧の中に浮かび上がるのように、夢幻的な魅力に溢れた作品です。

 第1主題は、まるで降り続く霧雨のようなしとやかさと渋さを持っています。音楽はやがて霧の中の幻のように揺れ動き、その輪郭をはっきりとつかむことはできません。次第に光が差し込んでくるように短調から長調になり、最後には霧が晴れて明るい六月の空が広がるように終わります。

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クロード・モネ「睡蓮」





ラベル:フォーレ
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2012年05月03日

イメージクラシック「雨」その16

ラヴェル ピアノ三重奏曲イ短調

海岸に打ちあげられた瓦礫に
しとしとと雨が降りかかる
いつの間にか緑が芽生えているが
思い出は決して風化することはないだろう

 ラヴェルピアノ三重奏曲の第1楽章。失われたもの、あるいは失われつつあるものへの、愛おしさや悲しみ、あるいは諦め、またそのように思わずにはいられない状況に対する怒りといった思いが伝わってきます。ラヴェルは第1次世界大戦の最中、フランス軍のトラック運転手を務めながら、この曲を作曲しました。表面上は全くといっていいほど、戦争に対する不安や恐怖等といったものは出てきません。死を決意した、あるいは受け入れた者の透徹した感情が全曲にわたって張り詰めています。

 ラヴェルは有名なボレロスペイン狂詩曲などオーケストラの魔術師としてのイメージが強い作曲家です。したがってラヴェルという作曲家の一般的なイメージはどちらかというと理性的、技巧的な作曲家です。しかし、ラヴェルには時々この世とは思えない深淵を覗き込むような曲想を持た作品が登場します。ピアノ協奏曲の第2楽章や夜のガスパール等です。この曲は民謡風な主題で始まり、前衛的な響きはありませんが、何かとてつもない世界を感じさせる存在感を持った作品だと思います。



ラベル:ラヴェル
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2012年04月26日

イメージクラシック「雨」その15

ブラームス バラード第1番『エドワード』

暗い部屋でひとり聴く雨の音
雨音は次第に強くなり
運命の鐘が激しく心を揺らす

 1854年2月26日、どしゃ降りの雨の中ロベルト・シューマンはライン川へ投身自殺を図りました。一命はとりとどめたもの、この事件はブラームスに大きな衝撃を与えたのでした。

 ブラームスのバラードは4曲まとめて出版されました。バラードを4曲残したのはブラームスとショパンだけですが、両者の作風は大きく違います。

ショパンはがある
ブラームスは地味

それではブラームスは面白くないかというと全然そういうことはありません。一言でいうと深くて透明な抒情とがっしりとした男性的な響きという他の作曲家にはない醍醐味があります。特に、バラード第1番の対位法的に運命音階がクレシェンドしていく中間部は何度聴いても飽きがなく、僕はとても気に入っています。


ラベル:ブラームス
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2012年03月10日

イメージクラシック「雨」その14

ショパン バラード第2番ヘ長調

 久々に2日間続けて雨が降りました。長い雨は春が近づいていることを教えてくれます。春を感じてうれしいという気持ちと、冷たい雨の厳しさに気がふさぐという2つの感情が交互にまじりあう不思議な気持ちです。

 しとしとと降る雨の情緒に合うと思われるのが、ショパンバラード第2番です。この曲は穏やかで落ち着いた主題で始まりますが、この部分の雰囲気が『雨だれ前奏曲』を彷彿とさせます。穏やかな音楽が一巡した後、突然嵐のようなプレストになります。これでもかと大地にたたきつける嵐の雨のようです。嵐が静まった後、冒頭の穏やかな音楽と激しいプレストが繰り返しコーダに入るのですが、このコーダがまたものすごい音楽です。怒りと悲しみをたたきつけてもたたきつけきれないといった感情の爆発が伝わってきます。

大雨の中で叫ぶショパンという男

の姿がそこにはあるように思います。

 この曲をショパンは自らの意欲作だと思っていたためか、この曲をシューマンに献呈しました。ところが、シューマンはこの作品をあまり評価しなかったとそうです。おそらくシューマンの美意識に適わなかったからだと思いますが、ピアノソナタ第2番『葬送』と並んで最も前衛的な作品であることは間違いないでしょう。



ラベル:ショパン
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2011年12月02日

イメージクラシック「雨」その13

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調より第1楽章

 冷たい雨が朝から降り続く1日でした。朝カーテンを開けると外は暗く、庭は濡れていました。僕は朝から降る雨が好きなのですが、今日の雨は思った以上に冷たく、肌を刺すような痛みを感じました。冬将軍に親しみを感じて接すると、思わぬしっぺ返しがくるものです。

 「この冷たい雨の中を俺は行かなければならないのか」

 チャイコフスキー交響曲第5番の第1楽章の第1主題。重い足取りだが毅然とした態度で前進する音楽です。この第1主題の前には、陰鬱な深い霧の中のような序奏があり、重くて暗い「運命の動機」をクラリネットが吹きます。やがて雨が上がり、人生を回顧するかのような優雅な第2主題が、夢の世界へ誘いますが、やがて現実に引き戻され過酷な運命を背負いながら決然とした態度で、音楽は進み続けます。

 チャイコフスキーの交響曲は全6曲で、4番から6番までは後期3大シンフォニーとして大変有名です。僕は「冬」のカテゴリーで、交響曲第4番を取り上げ、冒頭のファンファーレを

冬将軍の到来

と名付けました。この第5番でも冬将軍は生きており、第6番『悲愴』までその影響力は続きます。3曲とも個性に富んでいますが、どの曲にも共通するのは「重さ」と「暗さ」で、この3曲は作曲年が隔たっていますが、チャイコフスキーの人生観を象徴的に表した連作ととらえる方が自然ではないかと思っています。 

チャイコフスキーには冬が良く似合う

posted by やっちゃばの士 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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