2010年03月29日

キーワードクラシック「フィギアスケート」C

ラフマニノフ 前奏曲嬰ハ短調『鐘』 幻想小曲集より

 浅田真央選手が、トリノで行われたフィギアスケートの世界選手権で優勝しました。フリーの演技をテレビで見ましたが、オリンピックの時のような悲壮感がなく、非常に自信に満ち溢れた堂々とした演技だと思いました。BGMのラフマニノフの前奏曲『鐘』のオーケストラの主題が「重々しく」ではなく「堂々」としか聞えませんでした。

 今シーズンの浅田選手のフリープログラムで使われているラフマニノフの前奏曲『鐘』の原曲はオーケストラ曲ではなく、ピアノ独奏曲です。ラフマニノフは作曲にあたって、大小さまざまな鐘の音が重なり合って聞こえる様子をピアノで表現したと言われており、ピアノの原曲で演奏されてこそ、鐘のイメージを感じ取ることができます。

 ラフマニノフは生涯に24曲の前奏曲を作曲しました。24曲という数は、バッハ、ショパン、ショスタコーヴィッチたちの前奏曲と同じですが、彼らの前奏曲が24曲セットになって出版されているのに対して、ラフマニノフの場合はセットになって出版されていません。

rr.JPG


 この『鐘』前奏曲は『幻想的小品集』の中の1曲として書かれたもので、作曲者19歳の時の作品です。ラフマニノフは早熟型の作曲家で、20歳前後にリリシズムデモーニッシュさが共存した傑作をたくさん残しています。30代になると多忙な演奏活動のためか若い時の作品にあったこの魅力が影をひそめてきます。24曲の前奏曲の中で一番印象深いのが、生涯最初の前奏曲であるこの曲となっています。

 ちなみに、ラフマニノフには、前奏曲『鐘』とは別に、合唱交響曲『鐘』という作品があり、ラフマニノフの『鐘』というと、クラシックファンの間では、普通後者のことを指します。ラフマニノフの作品において、教会の鐘の音の響きは重要なファクターであり、この2曲以外にも鐘の音をイメージさせる曲はたくさんあります。例えば有名なピアノ協奏曲第2番の第1楽章冒頭のピアノの打鍵が次第に大きくなっていく部分を聴くと、誰もが鐘の音をイメージすると思います。


posted by やっちゃばの士 at 13:13| Comment(0) | フィギアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月04日

キーワードクラシック「フィギアスケート」B

メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調

 何年か前安藤美姫選手がこの曲を使っているのを見て、僕は「意外だ」と思ったのを覚えています。そもそも舞曲でも、物語曲でもない、そしてドイツの作曲家の絶対音楽(標題性がない音楽)がフィギアスケートの曲として使われると思ってなかったからです。

 協奏曲は、交響曲と違って、ピアノやヴァイオリンなどの独奏楽器の名人芸を引き立てようとするところがあるので、絶対音楽のなかではもっとも外面的な音楽性を持つジャンルです。したがって、名人芸が引き立つような協奏曲作品は意外と取り上げやすいのかもしれません。ヴァイオリンを伴った協奏曲的作品では以前サン=サーンスの『ロンド&カプリチオーソ』が取り上げられていたのを見たことがあります。

 このメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調は、

思わず口笛で吹きたくなるようなメロディ
ヴァイオリンとオーケストラのバランスのとれたマッチング
深い叙情性と内面性


を持つメンデルスゾーンの最も充実した作品のひとつで、数多くの作曲家が作曲したヴァイオリン協奏曲の中にあって、

ヴァイオリン協奏曲の女王


に位置付けられています。美しく流れるようなメロディをもつこの作品も完成までには多くの紆余曲折を経ました。そこには作曲家の才能以上のストーリー性が含まれています。内面から湧き出るような抒情性は技能だけから生まれるものではないことをこの曲は教えてくれます。

関連記事です。
http://yachaba.seesaa.net/article/119964598.html


posted by やっちゃばの士 at 13:21| Comment(0) | フィギアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月01日

キーワードクラシック「フィギアスケート」A

サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調『オルガン付き』

 クラシック音楽の作曲家の中で、誰の作品がフィギアスケートの振付曲で使われることが一番多いでしょうか。思いつくままに上げてみると、

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番、パガニーニ変奏曲など
チャイコフスキー 『白鳥の湖』、『ロミオとジュリエット』
リムスキー=コルサコフ 交響組曲『シェヘラザード』
アダン バレエ『ジゼル』
ストラヴィンスキー バレエ『火の鳥』
ラヴェル 『ボレロ』



 このようにみていくと、バレエ音楽などの舞曲や物語の音楽、もしくは絶対音楽で曲想がロマンティックで親しみやすいものが多いです。クラシック音楽の本流、ドイツ、オーストリア系の作曲家の作品はあまり見当たりません。ちなみに、今回の安藤美姫選手のショートプログラムはモーツァルトの『レクイエム』(編曲)でした。

 安藤美姫選手というと、今回のフリープログラム『クレオパトラ』が話題になりました。彼女は昨年からコーチを替えたようで、前よりも妖艶な演技をするようになりましたが、その前までは毎年いずれかのプログラムにクラシック音楽を用いており、僕は彼女に対してクラシック音楽のイメージが強いです。

 特に僕が、こんな曲もフィギアスケートに使えるんだと思ったのが、


サン=サーンスの交響曲第3番
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調(次回で)



です。フランスの大作曲家サン=サーンスの曲は親しみやすいので、しばしばフィギアスケートで登場しますが、この大曲をスケートで聴いたのは初めてでした。

 使われていたのは、曲の後半部分で第2楽章の冒頭とフィナーレです。この曲を愛している僕からすれば、おいしい部分をたくさん逃しているのが残念でした。僕がこの曲で一番おいしいと思う部分は


第1楽章後半のアダージョ
第2楽章前半部と後半部を結ぶブリッジ



です。フィギアスケートで使うのは難しいかもしれませんが、僕が何らかの芸術の監督だったらバックミュージックにぜひ使ってみたいと思います。

関連記事
http://yachaba.seesaa.net/article/119475462.html


posted by やっちゃばの士 at 18:48| Comment(0) | フィギアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月25日

キーワードクラシック「フィギアスケート」@

ハチャトゥリアン 『仮面舞踏会』よりワルツ

 今冬のオリンピックの真っただ中ですが、そのなかでも一番注目を浴びているのがフィギアスケートです。フィギアスケートはオリンピックの種目の中で、唯一芸術点も評価の基準となるという点で特異な存在です。芸術点というのは絶対的な定量評価ができないものなので、どうしても審査員の主観が入ってしまいます。そうかといって、すべての選手が同じ振付、同じ音楽に合していては、フィギアスケートの楽しみがなくなってしまいます。フィギアスケートはオリンピックを盛り上げるための花とも言えそうです。

 フィギアスケートの振付曲と言えば、クラシックです。クラシックで使われる曲といっても、ノリのいいもの、ロマンチックなものでなければ、スピード感や美しさを高めることはできないので、だいたい登場する曲も限られてきます。同じ大会で異なる選手が、同じ曲で違う振付で演技しているということもしばしばです。ちなみに、振付曲はすべて歌なしです。歌が入ると審査員の審査に影響が出るからというのが理由だそうです。そのように考えると、名盤と言われる一流の演奏家の録音を使うことはちょっと危険かもしれませんね。

 さて、日本のエース浅田真央選手の振付曲は、アルメニア(旧ソ連)の作曲家ハチャトゥリアンの劇音楽『仮面舞踏会』のワルツです。ハチャトゥリアンと言えば、小学校の音楽の時間に習う舞曲『剣の舞』によって知られていますが、彼は交響曲やピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲などにも傑作を残した大作曲家です。この仮面舞踏会のワルツは彼の作品の中ではポピュラーな曲でオーケストラのピースのひとつとしてCDも何点かありましたが、広く知られるようになったのは、一昨年あるビール会社のCMで放送されるようになってからで、これに影響を受けたのかどうか分かりませんが、その後浅田真央選手がスケートで使うようになりました。

 曲は絢爛豪華なオーケストラの全合奏で始まります。このワルツの主題は華やかですが、どこかシニカルで退廃的な雰囲気を含んでいます。実際にこの劇の内容は、ロシア末期の貴族社会を風刺したもので、悲劇の方向に向かって音楽は進行します。個人的には、あまり浅田真央選手のイメージに合ってないような気がするのですが、いかがでしょうか


posted by やっちゃばの士 at 12:00| Comment(0) | フィギアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。