2013年04月29日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その4

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調『田園』より第2楽章「小川のほとり」

木管楽器の原点回帰

 木管楽器の響きはおそらく鳥の鳴き声に摸したところが出発点だと思われます。楽器の発展とともに、鳥の鳴き声とは関係なく、木管楽器の音として定着してきました。ハイドンモーツァルトの木管楽器の響きは、その特徴を見事に引き出されていて、完成された美を持っています。そんな木管楽器の完成された響きを、原点の鳥の鳴き声に近づけよう、あるいは鳥の鳴き声に似せようという、それまでとは全く違ったベクトルに向かっていったのが、このベートーヴェン『田園』の音楽です。

クラリネットはカッコウ
フルートは夜鶯
オーボエは鶉
弦楽器は水と光と空気を

 つつじが咲く季節になると、僕は毎年『田園』を聴きたくなります。今回聴いてみて、この第2楽章の木管楽器の響きが改めて新鮮で革新的であることを感じました。『英雄』、『運命』と音楽史の新しい扉を開いたベートーヴェンですが、おそらくこの『田園』が新しく開いた扉は、最もイノベーション的であると言えます。作曲者自身が名づけた標題を持つ唯一の交響曲であることがそのことを物語っています。

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2013年03月31日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その3

モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番ニ短調より第4楽章

春の野に響く悲しい鳥の鳴き声

 どんよりとした春特有の曇り空。薄暗い明け方に鳴くホトトギス。朝日が差すのをひたすら待つ続けているようだが、大地には桜の香りが広がるだけで光が差さない。何度も体験したこの風景に、回想的な気分になります。昔も今も同じ思い、ただ境遇は変化していく。

 果てしなく続く物悲しい思い。モーツァルト弦楽四重奏曲第15番(ハイドンセット第2番)の第4楽章は、そんな気持ちにさせてくれる曲です。モーツァルトは、そういった楽想を強めるために、変奏曲の形式でこの楽章を書きました。変奏曲では、ある主題(テーマ)が形を変えて繰り返し出て来るため、短調の主題の場合は、悲しみを切々と訴えるような独特の情感を生みます。

 特にヴァイオリンが執拗に奏でる三連符は鳥の物悲しい鳴き声のようで、強い印象を与えます。この曲も「モーツァルトの悲しみ7選」のひとつにしましたが、その中でも飛びぬけて深い悲しみを与える曲だと思います。

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2013年01月18日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その2

ハイドン 弦楽四重奏曲第39番ハ長調『鳥』より第1楽章

 ハイドンの作品の中には、「鳥」に関係するニックネームがついた曲がいくつか存在します。交響曲第83番『めんどり』、弦楽四重奏曲第67番『ひばり』、そして弦楽四重奏曲第39番『鳥』です。この中で最も鳥のさえずりをイメージさせてくれる曲が、この弦楽四重奏曲です。鳥のさえずりを思い出させるヴァイオリンの二重奏がとても印象的で、曲のいたるところに顔を出します。

 この弦楽四重奏曲は「全く新しい特別な方法でされた」とハイドン自ら述べた6曲の弦楽四重奏曲からなる「ロシア四重奏曲」の中の一曲で、この『鳥』以外の曲も、とてもユニークで存在感があります。特にそれまでのハイドンの曲に見られなかったユーモアのような遊び心に満ちた仕掛けが見られるのが特徴です。この四重奏曲集は、モーツァルトに深い感銘を与え、モーツァルトの最高傑作のひとつ「ハイドン四重奏曲」を書かせるきっかけとなりました。『鳥』四重奏曲はハ長調ですが、モーツァルトのハイドンセットの中で同じハ長調で書かれた『不協和音』のニックネームで親しまれる弦楽四重奏曲第19番を聴くと、この2曲はちょっと似た雰囲気を持っているなと感じます。



ラベル:ハイドン
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2012年04月22日

イメージクラシック「鳥のさえずり」その1

ブルックナー 交響曲第0番二短調より第1楽章

ほの暗い教会の窓を開けると
風に乗って流れて来る
春の小鳥のさえずり

 ブルックナー交響曲第0番二短調は本来交響曲第2番となるはずでした。ところが、この作品に自信を持てなかったためお蔵入りにしてしまいました。新たにハ短調の交響曲が作曲され、第2番となりました。その後第9番まで傑作を残しましたが、この第0番は二度と日の目を見ることはありませんでした。

 ブルックナーがなぜ自信を持てなかったか、それはこの交響曲を聴いてみるとわかります。ベートーヴェンに代表される交響曲の傑作は、音楽の流れがはっきりしていて、盛り上がるべきところで盛り上がります。ところが、ブルックナーのこの交響曲は、音楽の流れが前へ進むのをためらうようなところがあり、盛り上がりそうで盛り上がらない音楽になってしまっています。ブルックナーの音楽を知らない人がはじめて聴くと、きっとわかりにくいと感じてしまうのではないでしょうか。

 それではこの交響曲は価値がないのかというと、そうではありません。ブルックナーの作品に親しんだ人は、地味とはいえ後のブルックナーの交響曲の特徴が詰まっているので、ブルックナーの魅力を堪能できると思います。第1楽章はとても根暗な曲想なのですが、牧歌的な第2主題と時折登場する小鳥のさえずりのようなフルートが印象的です。

 ブルックナーのシンフォニストとしてのキャリアはミサ曲から始まりました。ミサ曲は3曲とも傑作ですが、ミサ曲という曲の性質上曲想は暗いです。ただ時折自然を感じさせる曲想が登場するのがブルックナーのミサ曲の特徴で、小鳥のさえずりのようなものも登場します。その後第1交響曲を作曲します。この交響曲は勢いはいいのですが、あまり自然を感じさせる要素が少ない作品です。おそらく、ブルックナーは第1交響曲の方向性に行き詰まりを感じたのでしょう。再びミサ曲に近い曲想の二短調の交響曲(第0番)を作曲します。ミサ曲のように暗いけれども、自然の明りがすでに差し込んでいます。それでも彼は自信が持てませんでした。やがて第2交響曲ハ短調において、彼の音楽は暗い教会を去り、明るい田園を目指します。その後、彼の交響曲はジャックの豆の木のように、天をめがけてすくすくと成長していくのでした。

ラベル:ブルックナー
posted by やっちゃばの士 at 15:37| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 鳥のさえずり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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