2012年05月28日

イメージクラシック「サスペンス」その2

スクリャービン 交響曲第3番『神聖な詩』より第1楽章

傷ついた巨人は
後ろめたい気持ちを抱きながら
山々を走り回る
究極の癒しを求めて

スクリャービン交響曲第3番『神聖な詩』の第1楽章は、闘争という標題がつけられています。この第1楽章は序奏を持っていて、この序奏の主題は巨人ののっしりとした動きのように鈍重で強烈な印象を与える音楽です。そしてそれに続くアレグロの主題は、何とも後ろめたい気持ちを抱かせるこれまた強烈な主題です。

まるで罪を隠して逃げているような感じの主題

です。この暗く後ろめたい主題を聴くたびに、僕はサスペンスドラマの主題にぴったりだなあと思ってしまいます。

 さて、この交響曲『神聖な詩』は3楽章からなり、

第1楽章 闘争
第2楽章 快楽
第3楽章 神聖な遊戯

という標題が作曲者によって名づけられています。スクリャービンは交響曲を5曲残しましたが、第1番から第3番までは上記の標題と似たようなストーリー性を持っていて、第4、第5においては、快楽の部分だけがクローズアップされてきます。スクリャービンにあっては、闘争から勝利へという価値観はなく、苦痛から快楽へという価値観が一貫しています。

fe593491e2101232.jpg
ルドン『キュクロプス』

posted by やっちゃばの士 at 09:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月28日

イメージクラシック「サスペンス」その1

ヴェルディ 歌劇『運命の力』序曲

 19世紀、ワーグナー以外の作曲家によるオペラ作品のほとんどが、人間関係のもつれ、愛と憎しみ、裏切りと復讐、殺人と自害などをテーマにしています。これは今でいえばテレビドラマの「サスペンス劇場」に相当すると僕は思います。

 テレビのなかったヨーロッパの19世紀の市民はドラマを見るために劇場に出かけました。歌劇の幕が上がる前の序曲をわくわくしながら聞いたことでしょう。サスペンスドラマが始まる前のわくわくぞくぞくした感じを最も伝えてくれる作品が、ヴェルディ歌劇『運命の力』の序曲です。

 歌劇『運命の力』はヴェルディの中期の終わりに作曲された作品で、主な登場人物がすべて死ぬという陰惨極まりないストーリーです。そういったストーリーを象徴するように、序曲の音楽は

運命が迫りくるような切迫感

運命から逃れようとする祈り

に満ちているのが特徴的です。この序曲は数あるヴェルディの序曲の中でも傑作として名高く『椿姫』『リゴレット』など多くの傑作を多く送り出した経験を経て身に付けた円熟したオーケストラ技法が感じられます。その圧倒的なスケールを作曲者自身も感じていたためか、この序曲のことをシンフォニアと呼んでいたようです。


タグ:ヴェルディ
posted by やっちゃばの士 at 18:57| Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。