2012年11月08日

イメージクラシック「田園」その5

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調より第2楽章

野人が夢見る

 ブルックナーは自身の交響曲第8番の第2楽章を、自ら「ドイツの野人」と呼びました。確かにこの曲は男性的な力強さを最大の特徴としますが、どこか哀愁に満ちた風が吹いているのも見逃せません。

この野人には秋の田園が似合いそうです。刈り入れが終わって藁が干してある11月の田んぼのほとりに野人が座って何かを考えているようです。やがて来るべき冬の足音なのか、楽しかった秋の収穫祭を思い出しているのかわかりませんが、僕にはブルックナーが過去の楽しみと将来への悲観の両方を思いながらこの曲を書いたように思えてなりません。

 ブルックナーは彼の交響曲の集大成という意識を持ってこの曲の作曲しました。そのため質量ともに、彼の交響曲の中で最も充実した作品となりました。ただ、彼はこのころから老いによる体力の衰えを感じていたようで、寂しさや悲壮感がこの巨大な曲のいたるところに表れています。この曲特有の深い情緒は、まるで現世の自然との別れをいとおしんでいるようにも思えてきます。

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アントン・ブルックナー

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2012年06月05日

イメージクラシック「田園」その4

ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第5番ニ長調より第1楽章

干拓地の夕べ
薄っすらとした白い空気が
大地を物憂げに覆う
常山の緑は濃い影を落とし
耳を澄ませば
農薬散布機の音がどこからともなく聞こえてくる

 5月から6月にかけての児島湖畔の干拓地の風景を眺めるのが、僕は好きでした。特に晴れた日の夕べは、オレンジ色の光が森の緑や湖面を美しく照らすのでした。「いつかきっと」という思いを抱きながら、静かに暮れていく時間をしばし過ごすのでした。20歳の半ば、もう15年くらい前のことです。

 僕は、この時期になるとヴォーン・ウィリアムズ交響曲第5番を毎年のように聴いています。この交響曲はどの楽章も田園情緒に満ちていて、大変素晴らしいのですが、静けさと思い出に詰まった田園情緒を感じさせてくれるのが、第1楽章と第3楽章です。この2つの楽章はつながっていて、ちょっと例えが変かもしれませんが、ベートーヴェン『田園』の第1楽章と第2楽章のような関係です。田園に到着してから、だんだん田園時間に溶け込んでいくような感じです。

 とくに第1楽章は、木管楽器の音色が独特で、ちょっと虚ろで非現実的な響きを持っています。冒頭のオーボエの響きを聴くと、僕は小さいころから田舎で夕方になると、聞こえてきた農薬散布の機械の音を思い出します。




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2012年02月21日

イメージクラシック「田園」その3

シベリウス 交響曲第1番ホ短調より第3楽章

午後の田園
解けて流れだす滝に虹がかかり
農民の心は弾む
まだ春は遠いけれども

 シベリウス交響曲第1番の第3楽章は、春先の田園情緒にあふれた楽章です。打楽器が刻むスケルツォのリズムは心が躍る農民のダンスのようで、とても素朴で牧歌的な魅力にあふれています。時折登場するハープは滝にかかった虹のようです。

 この楽章の後、第4楽章では再び寒い冬を思わせるように厳しい音楽になるので、小春日和のようなこの第3楽章は大変存在感があります。今年はまだ温かくなりませんが、2月も後半になると春を思いながら聴きたくなる音楽です。


タグ:シベリウス
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2012年01月12日

イメージクラシック「田園」その2

ブルックナー 交響曲第3番ニ短調より第1楽章

霜の降り立った冬の田園
土の下は生命のエネルギーに満ち
耳を澄ませば
ぱちぱちと何かがはじける音が聞こえる

 寒い日が続き、我が家の庭のホースの継ぎ目も寒さのあまりひびが入っていました。公園の地面には霜柱が出来ていて、踏むとざくざくとした音がします。霜柱を見ると、僕は昔小学校に通った田んぼの中の一本道を思い出します。6年間毎日半ズボンで、行きは寒いのでまっすぐ進みますが、帰りは田んぼの中に入って寒さで固まった土の塊などを投げ合っていたものです。

 僕は年が明けた今頃の季節が好きです。表面上は万物が寒さで縮んでしまっているように見えますが、内側では春に向けての準備が進んでいるように思うからです。この季節は種子に例えられます。種子は固い意志とあらゆる可能性を持ち、エネルギーに満ちています。

 ブルックナー交響曲第3番の第1楽章は、冬の田園風景を感じさせてくれます。ブルックナー最初の大型交響曲である第3番は、ワーグナーに捧げられたため『ワーグナー』というニックネームを持っています。実際の音楽はワーグナーの音楽には見られない土の香りと田舎くささをもっています。第1楽章では印象的な3つの主題が登場しますが、これが実に田園ストーリー的です。

第1主題 哀愁に満ちたトランペットの響き。厳しい寒さに震える田園風景が広がります。

第2主題 弦楽器による穏やかだが神々しい音楽。生物に命を与える光と水。

第3主題 力強い男性的な音楽。エネルギーは高まり、やがて来る爆発に向かって前進。


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2011年10月22日

イメージクラシック「田園」その1

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調より第1楽章

今故郷に帰るとしたら、稲刈りを終え田んぼと紅葉した山が迎えてくれるでしょう。そして青い空。青い空に広がるプロペラ機の音、西の空へ伸びる白い飛行機雲。子供のころ学校の教室からぼんやりと眺めていたものです。下校時の田圃道は稲の切り株のにおいに満ちていました。

田園の郷愁に満ちたヴァイオリン

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第1楽章。ロシアの香りに満ちたその音楽を聴くと、故郷の田園風景が広がります。と同時に何か懐かしい気分がこみ上げてきます。おそらく作曲者も故郷を懐かしんでこの曲を作曲したのではないかと思われます。彼はこの協奏曲と並行して『なつかしい土地の思い出』というピアノとヴァイオリンの曲を作曲しています。

チャイコフスキーはウラル山脈の田舎に生まれ、10歳で大都会サントペテルブルグに出て行きました。彼の作品には、子供のころの思い出を懐かしむ感傷的なものが多く、この曲もその一つです。第2主題とそれに絡むクラリネットの旋律等はまさに郷愁を誘ってやまないものですが、全体的に田園的な明るさに満ちているのがこの曲の印象を非常にさわやかにしています。


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