2012年11月24日

イメージクラシック「月」その7

ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調『月光』より第1楽章

スイスのルツェルン湖の月夜
さざ波に揺らぐ小舟のようである(R・レルシュターブ)

 先日娘の参加したピアノの発表会でベートーヴェン月光ソナタが弾かれていました。生徒さんが弾いているので、途中立ち止まりそうになるくらいゆっくりだったのですが、そのおかげで、僕はベートーヴェンは何を思いながら、このようなアダージョの第1楽章を書いたのだろうかと考えてしまいました。

 この『月光』というタイトルは、ベートーヴェン自身がつけたものでなく、この曲を聴いたドイツの詩人R・レルシュターブが述べた感想が由来になっていることは有名です。このタイトルがなかったなら、月光をイメージするだろうか、ベートーヴェンは全く別の物を想像しながらこの曲を書いたのだろうかと、いつも考えさせられます。そんなこともあって、僕はイメージクラシック「月」のカテゴリーにこの曲を入れることをためらってきました。

 小学校の時、月光ソナタとして、この曲を初めて聴きました。その時僕の頭には、月夜に照らされた夜の湖面が浮かんでいました。それ以来、月光のイメージとこのソナタは切り外すことができなくなってしまいました。それはともかく、このタイトルがずっと定着しているということは、この月光のイメージが的を得た表現であることを物語っています。



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2012年04月15日

イメージクラシック「月」その6

ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調より第2楽章

菜の花や月は東に日は西に(与謝蕪村)

 青鋼色の空と海。波の荒々しい音が鳴る浜辺に揺れる鮮やかな黄色い菜の花。岬の方を見ればオレンジ色の月がゆっくりと昇ってくる。西の空は燃え残った炭のように、光を失った雲はかすかにその端をピンク色に染める。

 まだ4月の夕べ、瀬戸内海の浜辺の風はまだ冷たく、上着なしで散策に出かけた僕は肩をすぼめてしまいました。美しい景色が目の前に広がっているのだけど、美しさと一体になれない厳しさを感じながら、心は緊張するのでした。

 ブラームスピアノ協奏曲第2番の第2楽章スケルツォは、南国のロマンティックな夜を思わせる情熱的な音楽です。穏やかな響きのこのピアノ協奏曲に中にあって、ちょっと異質な感じがする独特の響きを持っています。月夜の海辺の荒れる波音と共に聴きたい曲です。



ラベル:ブラームス
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2011年12月10日

イメージクラシック「月」その5

シェーンベルク 『浄められた夜』

 冷たく降り続いた雨はあがり、夕方になると日が差してきました。あっという間に夕暮れ時は過ぎ去り、冷たい夜の大気が辺りを覆うのでした。仕事を終えて、空を見上げると、丸い月が白く冷たそうな光を降り注いでいました。「いつの間にこんなに月が丸くなったのだろう」薄っすらとした雲を従えた月は、地上の寒さなど関係ないといわんばかりに、冷たい白い光をますます強く降り注ぐのでした。

 無表情の月は、本当は温かい光を僕に送ってくれているのだけど届かないのか、それとも最初から無情の冷たい光を放っているのかどちらかわかりませんが、どうにもならない現実を前に、シェーンベルクの弦楽合奏曲『浄められた夜』の冷たい弦楽器の響きと月夜の情景が浮かびました。『浄められた夜』はドイツの詩人デーメルの次のような詩(あらすじ)の内容を表現した音楽です。

真冬の月夜
林の中を2人の若い男女が歩いている
月は彼らの歩みについてくる
女は知らない男の胎児を腹の中に宿していると男に告げる
男はその胎児を自分の子として産んでほしいと答える
2人は愛を確かめ合い
月光の明るい夜の中を歩んでいく
 

 
 音楽は暗く重い歩行を表す低弦の響きで始まりますが、やがて透き通った美しい弱音器をつけたヴァイオリンの分散和音が空から降ってくる月の光を表現します。この出だしの部分を聴くと、視点が2人の歩みから全体の風景へと移っていくようで、とてもリアルな感じがします。舞台が設定されたところで、音楽は2人の内面の世界に入っていきます。こちらは不安と葛藤を表す非常におどろおどろしい音楽です。

 時間とともに月の無表情な白い光は輝きを増すばかりでした。



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2011年10月09日

イメージクラシック「月」その4

シベリウス 劇音楽『クリスチャン2世』組曲より序曲

満月の白い夜。穏やかな波はきらきらと輝き、丘の上の白いコテージはまるで幻想的な絵画のように美しい。まさに物語のような情景の中で、夢のようなロマンスを想像する。それが現実的に起こりうることでないことが分かっていても、この美しい情景の中でしばし物語の主人公になりたいと思うのだった。

シベリウス劇音楽『クリスチャン2世』の序曲は、満月の海辺のロマンスを想像させてくれる美しい音楽です。美しい音楽なので序曲ではなく、エレジーとも呼ばれています。民族的な旋律、リズムと、斬新で大規模なオーケストレーションを特徴とするシベリウスの管弦楽作品の中にあって、まるで19世紀前半のロマン派の作品のようなノスタルジックな響きを持っているのが特徴です。『フィンランディア』と同じころの初期の作品で、代表作とは言えませんが、その美しい抒情ゆえにもっと演奏されてほしい曲です。


ラベル:シベリウス
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2011年09月08日

イメージクラシック「月」その3

リスト ピアノ協奏曲第2番イ長調

満月にはラプソディックな音楽がよく似合う

 月のことを一番よく知っているのはジプシーかもしれません。定住せずに渡り歩く彼らは夜になると月と一緒に過ごしたからに違いないからです。美しくも妖しい月の光の下で、時には静かに物思いにふけり、時には激しい踊りをなしながら宴に興じたことと思います。

 リストピアノ協奏曲第2番の持つラプソディックな響きは、満月の夜のロマンティックでちょっと妖しい雰囲気にぴったりと合います。冒頭の木管楽器の響きは月の淡い光を、夢見るようなピアノと弦楽器の駆け合いは月夜のロマンティックなムードを、不気味なピアノの低音はジプシーを表しているように思えます。

 僕はこの曲にたびたび登場する悪魔的なピアノの低音にジプシーを当てはめましたが、ここは「死者」あるいは「魔物」などに置き換えてもいいと思います。ここには「陰的なもの」「マイナーなもの」に対する好奇心があります。僕は「狼男」の伝説を連想したりもするものです。

ラベル:リスト
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