久方やの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(紀友則)
たわわに咲いた桜の花に午後の温かい光が差し込み、その下を期待に弾んだ胸と緊張した面持ちで進んでいく新入社員。今日4月1日は新しい出発の日です。
このような春の晴れやかさと出発の緊張を併せ持った作品が、ベートーヴェンのピアノソナタ第4番です。ベートーヴェンがウィーンに進出して3年目、25歳の時に作曲されました。このソナタは、そのころレッスンを施していた愛弟子に献呈され、作曲者自身から「恋人」という愛称で呼ばれました。特に第1楽章は明るくやわらかい音の響きを持っていて、春ののどかな日を連想させてくれます。
第1楽章がとても平和的、女性的な雰囲気を持っているのに対して、他の楽章は変化に富んだ顔を見せます。印象的なのが
深く沈黙し考え込むような第2楽章
戦いにいどむような緊張感を持った第4楽章
で、この曲の持つストーリーは春に新しい出発をした若者が抱く心の動きを描いているように思えてきます。若きベートーヴェンの自信と若者特有の悩みが入り混じったような新鮮さがそこにはあります。

若きベートーヴェン

ラベル:ベートーヴェン