2011年12月10日

イメージクラシック「月」その5

シェーンベルク 『浄められた夜』

 冷たく降り続いた雨はあがり、夕方になると日が差してきました。あっという間に夕暮れ時は過ぎ去り、冷たい夜の大気が辺りを覆うのでした。仕事を終えて、空を見上げると、丸い月が白く冷たそうな光を降り注いでいました。「いつの間にこんなに月が丸くなったのだろう」薄っすらとした雲を従えた月は、地上の寒さなど関係ないといわんばかりに、冷たい白い光をますます強く降り注ぐのでした。

 無表情の月は、本当は温かい光を僕に送ってくれているのだけど届かないのか、それとも最初から無情の冷たい光を放っているのかどちらかわかりませんが、どうにもならない現実を前に、シェーンベルクの弦楽合奏曲『浄められた夜』の冷たい弦楽器の響きと月夜の情景が浮かびました。『浄められた夜』はドイツの詩人デーメルの次のような詩(あらすじ)の内容を表現した音楽です。

真冬の月夜
林の中を2人の若い男女が歩いている
月は彼らの歩みについてくる
女は知らない男の胎児を腹の中に宿していると男に告げる
男はその胎児を自分の子として産んでほしいと答える
2人は愛を確かめ合い
月光の明るい夜の中を歩んでいく
 

 
 音楽は暗く重い歩行を表す低弦の響きで始まりますが、やがて透き通った美しい弱音器をつけたヴァイオリンの分散和音が空から降ってくる月の光を表現します。この出だしの部分を聴くと、視点が2人の歩みから全体の風景へと移っていくようで、とてもリアルな感じがします。舞台が設定されたところで、音楽は2人の内面の世界に入っていきます。こちらは不安と葛藤を表す非常におどろおどろしい音楽です。

 時間とともに月の無表情な白い光は輝きを増すばかりでした。



posted by やっちゃばの士 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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