2011年09月29日

イメージクラシック「森」その3

シューベルト ピアノソナタ第18番ト長調『幻想』より第1楽章

森の中を彷徨う傷ついた青年

 シューベルトピアノソナタ第18番の第1楽章。最初から最後までローテンポで進むこの巨大な楽章の音楽は、森の中を彷徨う若者の姿をイメージさせてくれます。彷徨うといっても、迷ったり、夢遊病者のように彷徨うのではなく、自ら癒しと創造の泉を感じるために、森の中に入っていくといった意味です。

 シューベルトは多くの音楽仲間には恵まれていましたが、彼の作品の真の価値を理解してくれる人と、彼を心から愛してくれる女性には出会うことができませんでした。そんな彼の慰めは自然と触れることではなかったでしょうか。僕は彼のピアノソナタを聴くたびにこのような気持ちになります。僕がこのように感じるのは、連作歌曲集『冬の旅』の影響があるからかもしれません。孤独な若者が、自然と同化していくその切々とした歌は、まさしくシューベルトの心の叫びだと思うからです。僕は20歳を過ぎてからは、『冬の旅』を聴いたことはほとんどありませんが、高校のころ何度も繰り返して聴いた『冬の旅』に歌われる若者の心と抒情は、シューベルトとの音楽の本質だと思うようになってしまったからです。

 先にも述べましたが、このソナタの第1楽章は異常にテンポが遅く、他の彼のピアノソナタと比べても異色の存在です。そこには、現実のすべての重みから解放された作曲者の自由な創造性があるように思います。自由なファンタジーと言ったところでしょうか。特に、ローテンポの第1主題の後の軽快な第2主題、第3主題は、森の中をひらひらと舞う蝶のように変幻自在で、ファンタジーの極みを感じさせます。

ラベル:シューベルト
posted by やっちゃばの士 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。