2011年09月04日

キーワードクラシック「かなしみ」その2

モーツァルト ピアノ四重奏曲第1番ト短調より第1楽章

涙の湖面をゆらゆらと漕いでいく一艘の小舟

 ほとんど波のない午後の水面には、明るい日差しが照りかえし、さわやかな風が木々の緑を揺らしているというのに、この静寂はどういうことだろう。ただ波に身を任せるままにかなしみは流れていく。

 モーツァルトピアノ四重奏曲第1番ト短調の第1楽章は、モーツァルトの短調作品の中でも、飛びぬけて深い悲しみを湛えた名曲です。内容もとても充実していて、聴く人に、「モーツァルトは気合を入れて作曲したのだなあ」という気持にさせる迫力があると思います。

 曲の冒頭の運命の動機のような力強い第1主題が印象的ですが、それ以上に印象的なのが、主題展開部です。静寂の中を、先ずはピアノのアラベスクが切なく歌い、それに弦のアラベスクが続きます。両者のアラベスクは巧みに交差しながら、嗚咽へと変わっていきます。この部分は、

かなしみの涙の海に揺れるボート

のようなせつなさに満ちていて、かなしみが募ってきます。

 この楽章に続く、第2楽章、第3楽章は長調で、この第1楽章だけがものすごい悲しみに満ちているので、「第1楽章のあの悲しみはどこへ行ってしまったのだろう」とちょっと違和感を感じてしまいます。実は、この曲の後に続けて作曲されたピアノ四重奏曲第2番変ホ長調の第1楽章展開部に第1番1楽章冒頭の運命の動機によく似た音楽が登場します。僕はこの第2番の第1楽章を「モーツァルトの悲しみは解決してなかったんだなあ」という思いを持ちながらいつも聴いています。この2曲はセットで聴くべき曲であると思っています。





posted by やっちゃばの士 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | かなしみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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