2011年07月31日

イメージクラシック「山」その3

ワーグナー 歌劇『タンホイザー』より 序曲とヴェーヌスベルグの音楽

 蒸し返るような暑さが続きます。噴き出す汗、露出する肌、旺盛な食欲、夏の暑さは人の心を肉的な方向へと誘うものです。夏の持つ官能性はストレートです。春の官能性が恥じらいに包まれているのと違って。

 ワーグナー歌劇『タンホイザー』の序曲に続くヴェーヌスベルグの音楽は、この夏の官能性を感じさせてくれます。ヴェーヌスベルグとはドイツ語で「ヴィーナス(女神)の山(洞窟)」という意味で、このオペラでは官能と愛欲を象徴します。このオペラのテーマは肉体的な愛と精神的な愛の間で揺れるタンホイザーの苦悩と精神的な愛による救いです。愛欲を象徴する女性のヴェーヌス精神的な愛を象徴する女性のエリザベートが登場し、音楽も愛欲讃美の主題とキリスト教を象徴する巡礼の主題の2つが互いにぶつかりあいます。


 僕が『タンホイザー』の全曲を初めて聴いたのは大学1年の時。それまで序曲しか知らなかった僕は、序曲の巡礼の主題の厳かさばかりに気をひかれ、タンホイザー序曲は秋の野山にこそふさわしい曲だと思っていましたが、ショルティのパリ版のヴェーヌスベルグの音楽を聴くと、その官能性に圧倒され、タンホイザーは夏の野山こそふさわしい音楽だと思うようになりました。善と悪の間に揺れる大学1年の心を、ここまで陶酔させた音楽はありません。

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posted by やっちゃばの士 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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