2011年06月12日

イメージクラシック「夕暮れ」その2

サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」より第1楽章第2部

オレンジ色に染まった雲が初夏のそよ風に乗って西から東に次々と流れてくる。日没までにはまだまだ時間があるが、この雲の色づきのなんと鮮やかなことだろう。まるで神々の乗った船が流れてくるようだ。

 このさわやかなオレンジ色の雲の行進は、初夏から梅雨の季節にかけてのみ見れる景色です。僕は今39歳ですが、少なくとも僕が今までの人生の中でこの景色に出会ったことがあるのはこの季節しかありません。中でも鮮烈な体験をしたのは、高校2年生のときです。夕方部屋の中で寝っ転がっていましたが、窓の外があまりにもオレンジ色に見えるので、外に出てみたのです。空を見上げるとあまりにも神々しい風景が広がっていました。僕は東の海の方に向かって伸びる田圃道を雲の流れとともに歩いて行きました。

 僕の頭の中に浮かんだ音楽が、サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付」のアダージョです。オルガンの神々しい響きの上に歌われる牧歌的な旋律の何と美しいこと。「牧歌的」に「流れるような」美しさがこのアダージョの大きな特徴だと思いますが、このような美を感じさせてくれる音楽は他の作曲家の作品にはないのではないでしょうか。風景が音楽の美しさを改めて感じさせてくれる体験を僕はこの時にしたのでした。

 暮れていく西の空に浮かぶ雲は、オレンジの光を失い、炭のようにまっ黒になって、かすかに端の方だけがかすかにオレンジ色に光っていました。辺りはすでに闇に覆われようとしていましたが、消えかかりの火がくすぶり続けるように、雲の端はかすかにピンク色に染まっていたのでした。僕はこの瞬間がとても貴重なものに思えました。アダージョの後半、それまでの流れるような旋律が停滞し、闇に包まれていく部分が重なって響いてました。

 美しい夕暮れの音楽。サン=サーンスのアダージョと共に、この季節になると、またあの美しい光景に出合うことが出来ないかと晴れの日の夕方の空を僕は見上げることが多いです。

ラベル:サン=サーンス
posted by やっちゃばの士 at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 夕暮れ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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