2011年03月31日

キーワードクラシック「卒業」その4

メンデルスゾーン 交響曲第5番ニ長調『宗教改革』より第4楽章

僕がこの文章を再び書きだしたのは今日31日になってからです。3.11の大地震から時間は止まり、過去から断絶した世界に入ったような気がします。クラシック音楽について今書くことに何の価値があるのかという思いがふつふつとわいてきて文章を書くことができませんでした。

 僕の住む浦安も、液状化で大きな被害を受け、娘の通う小学校、幼稚園は断水で登校もできなくなりました。南国風の美しい町並みは、砂埃と地割れによる乾いた街並みになってしまいました。日に日に復興していく街の姿を眺めながらふと「卒業式はどうするのだろう」という思いが浮かびました。

 もともと「卒業」というキーワードで書こうと思っていましたが、3.11以降「卒業」の重みが変わってしまいました。東北の被災地の卒業式の映像を見ると涙が流れてくるように、涙なしでは今年の「卒業」は語れないと思っています。

 今回、「卒業」にふさわしい音楽としてメンデルスゾーン交響曲第5番の終楽章を挙げたいと思います。この交響曲は、メンデルスゾーンが20歳過ぎのころ作曲したもので、実際には彼が世に出した2番目の交響曲となります。『イタリア』や『スコットランド』の陰に隠れて目立たない存在ですが、メンデルスゾーン特有の洗練された雰囲気建築物を思わせる立体的な構成情熱的な力強さを持った力作で、僕は傑作だと思っています。『宗教改革』という標題は、ルターの生誕300年祭のために作曲されたことからついたもので、個の曲にはユダヤ人として迫害を受けてきたメンデルスゾーンの内的な葛藤と信仰がこめられているように思います。

 第4楽章は、ルターが作曲したコラール『神はわがやぐら』をフルートが奏しながら始まります。この冒頭の賛歌は平和と春の訪れを告げるような印象的な響きを持っています。このコラールの後、音楽は荘厳な建築物を思わせるような響きに変わり、対位法的に展開していきます。この喜ばしく荘厳な音楽は卒業式にぴったりではないかと僕は思います。

 メンデルスゾーンは一般的には裕福な家庭に生まれて何一つ不自由のない人生を送った作曲家として紹介されることが多いですが、実際は終生ユダヤ人として世間から迫害を受け続けました。この交響曲もユダヤ人作曲の曲ということで、演奏を拒否され続け、メンデルスゾーンの生前にこの曲が演奏されたのは1回だけでした。僕はメンデルスゾーンという人は、自分に厳しい人で自分の感情を余り音楽に出さないタイプの人ではないかと思います。この明るく平和な音楽の背後には、作曲者の特別な強い思いがあるように思えてなりません。

posted by やっちゃばの士 at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 卒業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。