2010年11月20日

イメージクラシック「秋のソナタ」その3

ブラームス 弦楽五重奏曲第2番ト長調

傷ついた鳶力いっぱい羽ばたけ晩秋の青空高く

 11月も後半に入り、晩秋の寂しさが感じられる季節になりました。晩秋になると無性にブラームスの後期の室内楽作品を聴きたくなります。2つの弦楽五重奏曲はそのような作品で、特に壮年期の最後に作曲された弦楽五重奏曲第2番は「晩秋のソナタ」にふさわしい魅力を持った作品です。
 
 ブラームスの弦楽五重奏曲の作品番号は111で作曲者57歳の時の作品です。この作品の後ブラームスは64歳の生涯を閉じるまでの間、クラリネットを含む室内楽曲とピアノの小品、4つの最後の歌などを作曲しています。これらの作品には晩年のブラームスの心情がつづられていているので、この弦楽五重奏曲はちょうどブラームスの作風が壮年から晩年に移り変わる時の作品であり、季節に例えるとちょうど秋から冬に移り変わる時つまり晩秋の作品であるということができると思います。

 作品は4楽章からなり、第1楽章だけが情熱的で力強さを感じるものの、残りの楽章は寂しさに満ちています。まるで第1楽章ではがんばって力を振り絞って作曲したけれど、残りの楽章では力尽きて寂しさとわびしさの本音がストレートに出てしまったかのような印象を受けます。実際にブラームスはこの作品を作曲する際にインスピレーションの枯渇を感じたようで、この作品を最後にして「もう大作は作曲しない」という決意をします。

 持てる力を注ぎ込んで作曲した作品だけに、第1楽章は充実しています。特に冒頭の光のさざ波のような弦のトレモロの中を、チェロが天に駆け上るように上昇していく第1主題は印象的です。創造の泉を湧きあがらせようとする作曲者の心そのものであり、まるで年老いた鳶が力を振り絞って羽ばたいて青空に向かって上昇していくようです。この第1主題は再現部ではヴァイオリンで歌うように登場しますが、ここの部分は上空に到達した鳶が優雅に旋回しているような気持ちよさと感動を与えてくれます。そうブラームスの創造の泉は枯れていなかったのです。


ラベル:ブラームス
posted by やっちゃばの士 at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 秋のソナタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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