2010年11月11日

イメージクラシック「朝」その3

チャイコフスキー 交響曲第3番ニ長調

 の湖畔の朝。紅葉は朝露に濡れ、湖面からは湯気が立っている。人里離れたこの朝の情景の中に人の姿は見えないが、そこには小さな生き物たちの生活がひっそりと営まれている。太陽の登場とともに活動を始めるのを、息をひそめて待っている。あたりは次第に明るくなっていき、山の端の上には青空が広がっていく。

 チャイコフスキー交響曲第3番の冒頭のほの暗い序奏は、上記のような情景を抱かせてくれます。チャイコフスキーはとても繊細な神経を持った人でした。そのような性格のせいだと思いますが、彼は弱い者や小さいものへの関心が強く、大人のリアルな世界から離れた童話やおとぎ話などの世界の音楽を描くのが得意でした。

白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』の3大バレエ
オペラ『スペードの女王』


などを始めとした作品や、その他のオーケストラ作品の中でしばしば登場するメルヘンチックなワルツなどには、まさに童心に帰った大人が抱く童話や物語の世界への憧れや、小さきものへの愛情が強く感じられます。同じような傾向を持つ作曲家としてラヴェル、マーラーがいますが、マーラーの交響曲第7番『夜の歌』はこの曲の雰囲気と編成によく似ています。

 交響曲第3番は全5楽章からなり、舞曲のように躍動的な両端楽章と抒情的な美しい3つの中間楽章からなります。全体から受ける印象としては交響曲よりも組曲という感じがします。チャイコフスキーは6つの交響曲のほかに4曲のオーケストラのための組曲を残していますが、組曲という編成は抒情的な音楽を得意とする彼の音楽様式には最もぴったりくるものだったのではないでしょうか。組曲もどきの交響曲として、交響曲としての評価は低いようですが、バレエの舞曲のような躍動感と小さいものをいとおしむような美しい抒情は絶品です。この曲は『白鳥の湖』と同時期に書かれたものであるせいか、『白鳥の湖』が持つ音楽の特徴がストレートに反映されています。


posted by やっちゃばの士 at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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