2010年02月19日

イメージクラシック「夜明け」D

チャイコフスキー オペラ『エフゲニー・オネーギン』より第1幕第2場

 ここのところ寒い日が続いていますが、一日のうちでもっとも気温が下がるのが「夜明け」の時間です。冬の夜明けともなると、氷が張り詰めたような寒さを想像しますね。この寒さは北国へ行けばいくほど厳しくなります。

 クラシックで北国と言えば、北欧をイメージすると思いますが、大陸ロシアも立派な北国です。むしろ、ロシアの内陸の冬の寒さのほうが厳しいでしょう。そんなロシアの冬の厳しい寒さを感じさせてくれるのが、チャイコフスキーの傑作オペラ『エフゲニー・オネーギン』の第1幕第2場の夜更けから夜明けにかけてのシーンです。

 『エフゲニー・オネーギン』は、非常に内面的で抒情的なオペラで、その音楽が持つ表現力と深さは他のオペラ作曲家の作品とは一線を画します。ストーリーも文豪プーシキンの原作なので、文学的で芝居かかったけばけばしさがありません。僕はオペラのストーリーが気になる方なので、気に入らないストーリーのオペラはほとんど聴きませんが、このオペラは大好きです。
 
 オペラの内容を簡単に説明すると、青年エフゲニー・オネーギンと若い女性タチヤーナの心の葛藤が描かれた作品で、互いの相手への思いのずれから、彼らは一緒になることができず、最後に後悔するというストーリーです。そこにはオペラによく登場する『破滅』、『自殺』、『不倫』などといったキーワードは登場しません。

 さて、ここで紹介する第1幕第2場は、タチヤーナが自宅で夜が更けてから、オネーギン宛てに自らの思いを打ち明ける手紙を書く場面で、タチヤーナは夜通し思いを巡らせながら手紙を書き続け、そのまま朝を迎えます。この場面でタチヤーナが歌うモノローグは

切実で純真な思いがしんしんとしみるように伝わってくる美しい音楽


です。やがて、金管楽器の鈍重な響きと弦楽器の低いつぶやくような弱音が


遠くから響いてくる大地のうなり声のように


夜明け前のエネルギーに満ちた瞬間を描き、音楽はクレッシェンドしていき、日の出を迎えます。朝のすがすがしい光をあびて、タチヤーナは決心します。

 この部分は何度聴いても感動的で、僕はこのオペラの中で一番好きな場面です。チャイコフスキーの優れた音楽は心理的な風景と外的な風景を掛け合わせて、ロシアの冬の夜明けの情景を見事に描いています。



posted by やっちゃばの士 at 11:58| Comment(0) | 夜明け | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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