2012年10月31日

キーワードクラシック「魔法」その1

デュカス 交響詩『魔法使いの弟子』

 今日はハロウィン。最もハロウィンにふさわしいクラシック音楽はなんだろうかと考えてみました。ハロウィンと言えば、お化けなのでお化けが出てくるベルリオーズ幻想交響曲の第5楽章やムソルグスキー交響詩『はげ山の一夜』などを思い浮かべますが、ちょっとこれらはハロウィンを楽しむにはおどろおどろしすぎています。

 僕は浦安市に住んでいますので、よく舞浜のイクスピアリに出かけるのですが、この時期のディズニーはハロウィン一色で、ハロウィンの衣装を着たミッキーの姿をポスターなどでよく見かけます。こんなこともあってか、ハロウィンと言うと僕はいつ頃からかディズニーのイベントを真っ先に思い浮かべるようになっていました。

 ここで出て来るのが、ディズニークラシックでも登場するデュカス交響詩『魔法使いの弟子』です。『魔法使いの弟子』はゲーテの同名のバラ―ドを音楽で描写したもので、魔法のほうきの動き等が精緻なオーケストレーションによって見事に表現されています。この曲はデュカス唯一の名曲として知られていましたが、ディズニー映画『ファンタジア』に編曲されて組み込まれることによって一層有名になりました。

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2012年10月30日

イメージクラシック「夜」その9

ワーグナー 楽劇『トリスタンとイゾルデ』より第2幕

さあっと満ちていく潮の流れのように
闇があたりを覆っていく
東の空には月がオレンジ色に燃え
海辺の公園のベンチには女性がひとり
誰かを待っているようだ

 仕事に没頭していて、気がつけばいつの間にか辺りが真っ暗になっていると感じる季節になりました。いつまでも終わらない昼間と違って、早く満ちる夜の海は緊張した気持ちを癒したり、大胆にしたりする作用を及ぼすのではないかと僕は感じています。

 さて、そんな夜の闇の力を極限にまで表現し、賛美している音楽がワーグナー楽劇『トリスタンとイゾルデ』の第2幕です。この楽劇は、生と死、昼と夜、現実と願望、苦痛と快楽の葛藤が音楽のうねりとなって延々と続いていきます。

トリスタンの昼を呪う叫びがとても印象的です。
Dem Tage!Dem Tage!   昼!昼!
Dem tuckischen Tage. 陰険な昼。


そしてトリスタンとイゾルデの二人は高らかに次のように歌います。
O sink hernieder. おお、降りてこい。
Nacht der Liebe.  愛の夜よ。


 この楽劇は全3幕からなり、第1幕と第3幕が昼間の苦痛の世界、第2幕が夜の癒しと快楽の世界というシンメトリックな構成になっています。第2幕はこの楽劇の山(頂点)であると同時に、ワーグナーの全作品の中の頂点ではないかと思われるほど、人を引き込む力がある音楽です。

 僕のクラッシック音楽鑑賞の歴史の中にあって、最も衝撃を受けた作品は何かと問われれば、真っ先にこの作品を上げます。高校生の時、初めて買ったワーグナーのオペラのCDがこの曲でした。その音楽の持つ魔力に圧倒され、僕はワーグナーについてもっと知りたいと思うようになりました。その後すべての彼の代表的な作品を聴きましたが、この『トリスタンとイゾルデ』を超える作品はありませんでした。




タグ:ワーグナー
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2012年10月29日

イメージクラシック「風」その12

ブラームス 交響曲第2番ニ長調より第1楽章第2主題

静かな夕闇の木立
さあっと西風が葉っぱを揺らす

 ブラームス交響曲第2番の第1楽章は自然に満ちた曲です。この曲はベートーヴェンの交響曲と比較され、ブラームスの田園とまで呼ばれました。ベートーヴェンの田園が描写的な音楽だとすると、ブラームスの田園はとても内面的です。ベートーヴェンの田園を聴いていると美しい田園風景が絵画的に浮かび上がってくるのに対して、ブラームスの田園は自然の情緒のようなものが象徴的に浮かび上がっては消えていくイメージです。分かりやすく言えば、前者ははっきりとした昼間の世界の自然を、後者は漠然としたの中の自然の風景を表しているように思います。

 ブラームスはこの作品を南オーストリアの避暑地ぺルチャハで書きました。作曲中友人に「ヴェルター湖畔の地にはメロディがたくさん飛び交っているので、それを踏みつぶしてしまわないよう、とあなたはいわれることでしょう。」と手紙に書いていることから、彼は自然から無数のインスピレーションを受けながらこの曲を作曲したようです。自然を連想させる印象的なパッセージがあまりにも多いので、僕はどのカテゴリーに入れればいいのか迷ってしまいました。そこで今回はこの曲の第1楽章の中でも最も好きなパッセージである第2主題を取り上げてみました。

 第1楽章の第2主題はチェロの微妙に憂いを帯びた柔和な旋律を持つとても奥の深い音楽です。とても印象深い音楽で、おそらく一度聴いたら忘れられない人が多いのではないかと思います。僕自身はじめてこの曲を聴いた中学生の時、この第2主題の深い叙情に感動して、ブラームスの音楽をもっと知りたいと思うようになりました。秋の夕べにさあっと流れて来る西風を感じる旅人のような気分にさせてくれます。

 この絶妙な色合いを持つ第2主題のように、この曲は明るいのか暗いのかよくわからない不思議さを持っています。陽と陰が織りなす妙は、彼が晩年に見せる東洋的な抒情を先取りしてると思います。

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2012年10月25日

イメージクラシック「風」その11

シューベルト 四つの即興曲作品90より第2番

秋の野風に身を委ね
ひらひらと舞い続ける
風はだんだん冷たくなっていく
僕はどこへ行くのやら

 落ち葉が風に舞う光景をしばしば見かけるようになりました。耳を澄ますと、青空上空で舞う風のごおっという音と、葉の揺れる音ばかりが聞こえてきます。

 シューベルト即興曲作品90の第2曲は、まるで風の動きのような無窮動な音楽で始まります。感情が入らない機械的な音楽はちょっとシューベルトらしくなくとても不思議な感じがします。途中からシューベルトらしい歌う旋律が合流し、最後は慟哭のような強い余韻を残しながら曲を閉じます。

 風に乗ってピアノの無窮動風な旋律が聞こえてきそうです。

posted by やっちゃばの士 at 09:58| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月20日

キーワードクラシック「宮沢賢治」その3

ワーグナー 楽劇4部作『ニーンベルングの指輪』第1部『ラインの黄金』より「ラインの川底」

二匹の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い
泡が流れていきます。
(宮沢賢治『やまなし』より)

 ワーグナー楽劇『ラインの黄金』の冒頭のライン川底の音楽を聴くと、宮沢賢治童話『やまなし』の冒頭の光景をいつも連想します。ホルンの淡い響きは川底に差し込む日の光を、弦楽器のうねりは波の動きを連想させ、単純な旋律を繰り返しながら、クレッシェンドしていきます。だんだん川底深くに下りていくようで、川底に到達したところで反復は止まり、川底に済むラインの乙女たちの明るい歌声が登場します。

 宮沢賢治の童話とワーグナーというと、何とも釣り合わない感じがしますが、明るさと不気味さが共存する川底の光景に関しては何か共鳴する世界があるのではないかと僕は感じています。

タグ:ワーグナー
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