2012年06月30日

イメージクラシック「疾走」その3

マーラー 交響曲第6番イ短調『悲劇的』より第4楽章

かなしみは疾走して、立ち止まり、また疾走する

 マーラー交響曲第6番の長大な第4楽章を聴くと、上記のような印象を抱きます。ギリシア悲劇のようなその整った音楽は聴く者に独特のカタルシスを与えます。悲劇的なストーリー性を持った音楽ですが、「わかりやすさ」と「甘美さ」が曲全体を大きく支配しています。

 僕はマーラーの交響曲の中では、最も「甘美」な曲ではないかと思っています。「苦悩」や「皮肉」といった要素がほとんど感じられないからです。マーラーは夏の山小屋で、アルマとの幸福な結婚生活中に、この曲を作曲しました。この曲には、カウベルやグロッケンシュピーゲルといった山の牧場を連想させる楽器が効果的に使われています。そういうこともあってか、僕には、上高地の美しい時間が少しずつ失われていくといった「時間の流れ」のようなものが、悲しみの疾走に思えて来るのです。


ラベル:マーラー
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2012年06月24日

イメージクラシック「祭り」その4

マーラー 交響曲第7番ホ短調『夜の歌』より第5楽章

長い夜を抜けると
明るくまぶしい祭りが広がる
夜が明けたわけではない
祭りを存分楽しもう

 マーラー交響曲第7番『夜の歌』の第5楽章は、それまでの夜の雰囲気の楽章から一転、明るくにぎやかな音楽になります。夜が明けて朝が来たようにも感じますが、最後に第1楽章の夜をイメージする主題が出て来るので、まだ夜が明けたわけではないことが分かります。僕は、大学1年生の時この曲と出会って以来、夏になると毎年この曲を聴いていますが、この第5楽章の音楽を、まるで夜の祭りの光景のように感じています。

 僕はこの交響曲第7番と第3番は、マーラーの交響曲の中でもとりわけ自然を感じさせる曲だと思っています。彼の世界観(自然観)陽的に表れたのが第3番、陰的に表れたのが第7番です。特に両交響曲の第1楽章冒頭のホルンの主題は、このことを物語っています。どちらも短調ですが、第3番が夜明けを告げるような音楽であるのに対し、第7番の方は闇の世界に入っていくような音楽です。いずれの曲も夏に聴きたいクラシックです。

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2012年06月20日

イメージクラシック「海」その9

メンデルスゾーン 序曲『静かな海と楽しい航海』

僕は毎朝の通勤で東京ゲートブリッジを車で渡ります。ゆるやかな勾配を海の方に向かって上っていく時はとても気持のよいものです。時々、橋の下をとても大きな貨物船が進んでいくのを見ることがあります。音もなく静かに波のほとんどない朝の東京湾を進んでいく船の動きと、その上を横切ろうとする僕の車の動きがクロスする時は、何とも言えないちょっとぞくっとする快感を感じます。

夏の穏やかな朝の海をゆっくりと進んでいく船を見ていると、メンデスゾーン序曲『静かな海と楽しい航海』を思い出します。この序曲はゲーテの2つの詩『海の静けさ』『楽しい航海』を音楽で描写したもので、メンデルスゾーンらしいさわやかで生き生きとした楽想を持っています。

 メンデルスゾーンは海が好きだったようで、彼の作品には「海」を連想させるものが少なからずあります。その理由として、彼がエルベ河畔港町ハンブルクの出身であるということがあると思いますが、それ以上に彼は生涯に何度も海を隔てたロンドンに渡っているということが大きいと思われます。彼の代表的な作品である交響曲第4番『イタリア』、オラトリオ『エリア』、序曲『フィンガルの洞窟』などはロンドンで初演されています。一般的にメンデルスゾーンは裕福な家庭に生まれ何不自由なく育った作曲家として紹介されることが多いのですが、ユダヤ人として生涯迫害に悩み続けた作曲家でもありました。そんな彼にとって、ロンドンはとても居心地の良い場所だったのではないでしょうか。ロンドンへの船旅は彼にとって期待に満ちた楽しいものだったにで海への愛着もそこから生まれたのではないかと僕は想像しています。

posted by やっちゃばの士 at 10:16| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月17日

イメージクラシック「祭り」その3

ストラヴィンスキー バレエ『ペトルーシュカ』

 僕の住む浦安市では四年に一度の大祭である三社祭が行われ、多くの出店でにぎわいました。夜になってもにぎわいは消えず、提灯と出店の暖色系のライトが祭りの夜を美しく彩ります。

 出店にあるおもちゃを見ると、僕はストラヴィンスキー『ペトルーシュカ』の音楽を想像します。ペトルーシュカの舞台は謝肉祭の市場、活気あふれる市場の中のある芝居小屋で、魔術師によって魂を吹き込まれた人形たちがシニカルな踊りを繰り広げるバレエです。

 バレエのストーリーは結構残酷なものなのですが、ストラヴィンスキーのオーケストラは、とても色彩感豊かで、まるで夜店や提灯の鮮やかな電灯の光を見るようです。そして、出店では生き生きとしたおもちゃも、買って持って帰ると魂を失ったようにつまらないものに見えてくるのが現実だと思うと、ペトルーシュカのストーリーは祭りの本質をついているようにも思えてきます。

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2012年06月14日

イメージクラシック「雨」その17

フォーレ ピアノ五重奏曲第2番ハ短調より第1楽章

霧のように煙る雨
かすかに光が差し込み
幻が浮かび上がる

 フォーレピアノ五重奏曲第2番は、作曲者70代半ばにあって聴覚障害と闘いながら作曲した作品です。前にこのブログで取り上げたピアノ五重奏曲第1番と比べると地味な印象がありますが、霧の中に浮かび上がるのように、夢幻的な魅力に溢れた作品です。

 第1主題は、まるで降り続く霧雨のようなしとやかさと渋さを持っています。音楽はやがて霧の中の幻のように揺れ動き、その輪郭をはっきりとつかむことはできません。次第に光が差し込んでくるように短調から長調になり、最後には霧が晴れて明るい六月の空が広がるように終わります。

EPSON018.JPG
クロード・モネ「睡蓮」





ラベル:フォーレ
posted by やっちゃばの士 at 22:15| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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