2012年05月31日

イメージクラシック「五月」その6

ブラームス 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調より第1楽章

会社を辞めて半月が経ちます。この期間は夢のような期間でした。悠々自適に家族とともに過ごせたのは10年ぶりでしょうか。5月最後の思い出に、5月らしい幸福感に満ちた曲を挙げたいと思います。

 ブラームス弦楽六重奏曲第1番の第1楽章は、ブラームスの室内楽の中で最も幸福感に満たされた音楽です。

明るい若葉のようにさわやかで温かい第1主題
のびやかで幸福感に満ちた第2主題

そしてこの楽章で効果的に使われる2本のチェロの温かい響きがとても印象的です。

 この曲が作曲されたのは、シューマン家と離れたデトモルト時代です。午前中は作曲、午後は合唱団の指導と、とても平和で穏やかな日々を彼はこの時期に過ごしたようです。

タグ:ブラームス
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2012年05月29日

イメージクラシック「河」その2

シューマン 交響曲第3番変ホ長調『ライン』より第2楽章

新緑とともに渓谷がとても美しい季節となりました。白く波打つ急流を船で下ったらどんなに気持ちいいことでしょうか。日本国内では船での川下りのことを一般的にライン下りと呼ぶようで、木曽川を下る日本ライン下り、天竜川を下る天竜川ライン下り、荒川を下る長瀞ライン下りなどが有名です。ライン下りはもともとドイツのライン川を船で下ることを指す言葉で、日本の川下りにラインというのはどうかと思いますが、このことはローレライ伝説で有名なライン川の船下りが、川下りの代名詞的な存在であることを物語っています。

 さて、そんな川下りの気分を感じさせてくれる曲が、シューマン交響曲第3番『ライン』の第2楽章のスケルツォです。民謡風のたゆたうような主題は、まるで川波に揺られながらゆっくり進んでいく船に乗ったような気分を感じさせてくれます。

 ラインという標題はシューマン自身がつけたものではなく、したがってこの第2楽章の音楽も、川の流れを描写したものではありません。この曲の印象から、自然とついたニックネームのようです。シューマンは、ライン河畔の町デュッセルドルフに引っ越してきて、ライン川の美しさに感銘を受けてこの交響曲を作曲したのでした。描写音楽ではないけれども、誰しもがそこにライン川の風情を感じ取ることができる、この交響曲は音の持つイメージの力を強く伝えてくれます。

タグ:シューマン
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2012年05月28日

イメージクラシック「サスペンス」その2

スクリャービン 交響曲第3番『神聖な詩』より第1楽章

傷ついた巨人は
後ろめたい気持ちを抱きながら
山々を走り回る
究極の癒しを求めて

スクリャービン交響曲第3番『神聖な詩』の第1楽章は、闘争という標題がつけられています。この第1楽章は序奏を持っていて、この序奏の主題は巨人ののっしりとした動きのように鈍重で強烈な印象を与える音楽です。そしてそれに続くアレグロの主題は、何とも後ろめたい気持ちを抱かせるこれまた強烈な主題です。

まるで罪を隠して逃げているような感じの主題

です。この暗く後ろめたい主題を聴くたびに、僕はサスペンスドラマの主題にぴったりだなあと思ってしまいます。

 さて、この交響曲『神聖な詩』は3楽章からなり、

第1楽章 闘争
第2楽章 快楽
第3楽章 神聖な遊戯

という標題が作曲者によって名づけられています。スクリャービンは交響曲を5曲残しましたが、第1番から第3番までは上記の標題と似たようなストーリー性を持っていて、第4、第5においては、快楽の部分だけがクローズアップされてきます。スクリャービンにあっては、闘争から勝利へという価値観はなく、苦痛から快楽へという価値観が一貫しています。

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ルドン『キュクロプス』

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イメージクラシック「五月」その5

ベートーヴェン 交響曲第2番ニ長調より第1楽章

 ついこの間まで咲いていた美しい花々は、いつの間にか姿を消し、どこもかしこも緑がものすごい勢いで生い茂るばかり、5月の新緑の成長の速さには目を見張るものがあります。

 ベートーヴェン交響曲第2番の第1楽章は、勢いよく生長する新緑のような魅力を持った音楽で、5月になると必ず聴きたくなる曲のひとつです。

期待感に満ちたワクワクするような序奏
ぐいぐいと推進力のある第1主題
雄大で伸びやかな第2主題

第3番『英雄』のように巨大な曲ではありませんが、小粒な体の中にはち切れるようなエネルギーが満ち満ちていて、「小さな英雄」というニックネームで呼んでもおかしくない曲だと思います。この交響曲を作曲した当時、ベートーヴェンは難聴に悩み、有名なハイリゲンシュタットの遺書を書きます。このハイリゲンシュタットの遺書とこの曲の関係を考えることは、とても興味深いです。

 この曲の特徴をより深く感じるために、僕は交響曲第1番、第2番、第3番『英雄』の三曲をセットで聴くのがいいと考えています。僕はこの三曲の関係を、

@第1番 蘇生レベル ホップ
A第2番 成長レベル ステップ
B第3番 完成レベル ジャンプ

と考えるからです。ベートーヴェンの交響曲は、第3番『英雄』でひとつの頂点に達し、第4番からは方向の転換を図ります。そのように考えた時、成長期にある第2番の占める位置は大変重要な位置になってきます。なぜなら、成長期は人間で言えば思春期にあたり、ここでは必ず激しい葛藤を経験するからです。成長期の戦いで得たものが、完成期の果実になるのです。僕はハイリゲンシュタットの遺書とこの2番が同時期になっていることに単なる偶然以上の価値を見出します。

 
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2012年05月26日

イメージクラシック「風」その10

ブルックナー 交響曲第2番ハ短調より第1楽章

冷たい風と
温かい風がぶつかりあい
流れていた音楽は
ためらい立ち止まる

 北の冷たい風と南の温かい風がぶつかり合って、不安定な天気になりがちな今の季節ですが、晴れた風の強い日には、風に揺れる若葉の緑と葉裏の白がとてもさわやかです。このように風にざわつき揺れる若葉を見ていると、ブルックナー交響曲第2番の第1楽章の冒頭のトレモロを思い出します。

 ブルックナーの交響曲第2番は、ブルックナーらしい個性が初めて花咲いた交響曲です。それまで彼は3曲の交響曲を作曲しましたが、どれも成功作とは言い難い出来でした。ひんやりとした憂いを含みながらもさわやかな第1主題、素朴でコラール風の第2主題、ブルックナー特有のリズムが面白い第3主題と、第1主題から第3主題への流れは素晴らしいものがあります。

 この抒情あふれる交響曲も、最初はなかなか評価されることはありませんでした。とくに第1楽章の主題展開部は僕が聴いてもすぐわかるほど盛り上がりに欠けるという欠点を持っています。盛り上がることを自信がないためか、ためらっているような音楽です。度重なる不評にも負けず、ブルックナーはこの交響曲を何度も書き直しました。前の3作と違って彼自身の中ではこの交響曲には手ごたえを感じていたのでしょう。

 さて、上記のような欠点があり、彼の交響曲の中でも目立たないこの第2交響曲ですが、この第1楽章は、ブルックナーの交響曲の中で、最も素朴な美しい叙情を持った作品で、僕は彼の全交響曲の中で、一番気に入っています。

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posted by やっちゃばの士 at 19:48| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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