2012年04月19日

イメージクラシック「春」その7

ドビュッシー 管弦楽のための映像より『春のロンド』

曇りがかった四月の日曜日の朝
今日は祭りだというのに大気は冷たく
人の姿もまばらに見えるだけ
盛り上がるにはまだまだ時間がかかりそう

 管弦楽のための映像の第3曲『春のロンド』で、ドビュッシーはどのような風景を描こうとしたのだろうか、僕はこの曲を聴く時いつもあれこれと連想してみます。霧に包まれたような開始、霧が晴れそうで晴れないちょっともどかしい展開。最後にやっとわかりやすい民謡風の旋律がイングリッシュホルンで登場して、やっぱり春なのかなという気分になるのですが、きっと雨か曇りの祭りの日を描いたのではないだろうかと思うのです。

 ちなみに、ドビュッシーはこの曲の中で、フランスの童謡「嫌な天気だから、もう森へは行かない」を使っています。なぜ明るい春もしくは眠気を誘う温かい春を描かなかったのかわかりませんが、この曲のイメージを考えていた僕の脳裏には、肌寒い四月の午前の風景を見ると、自然とこの曲が浮かぶようになっています。

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ラベル:ドビュッシー
posted by やっちゃばの士 at 18:11| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月15日

イメージクラシック「月」その6

ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調より第2楽章

菜の花や月は東に日は西に(与謝蕪村)

 青鋼色の空と海。波の荒々しい音が鳴る浜辺に揺れる鮮やかな黄色い菜の花。岬の方を見ればオレンジ色の月がゆっくりと昇ってくる。西の空は燃え残った炭のように、光を失った雲はかすかにその端をピンク色に染める。

 まだ4月の夕べ、瀬戸内海の浜辺の風はまだ冷たく、上着なしで散策に出かけた僕は肩をすぼめてしまいました。美しい景色が目の前に広がっているのだけど、美しさと一体になれない厳しさを感じながら、心は緊張するのでした。

 ブラームスピアノ協奏曲第2番の第2楽章スケルツォは、南国のロマンティックな夜を思わせる情熱的な音楽です。穏やかな響きのこのピアノ協奏曲に中にあって、ちょっと異質な感じがする独特の響きを持っています。月夜の海辺の荒れる波音と共に聴きたい曲です。



ラベル:ブラームス
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2012年04月12日

イメージクラシック「さくら」その2

ショパン ピアノソナタ第3番ロ短調より第3楽章

しっとりと肌を濡らす春の雨
ひらひらと舞い落ちる桜の花
のようなこのひととき

 まるで満杯になったコップから水があふれるように、たわわに満開になった桜の枝からはひらひらと花弁が落ちてきます。桜の花がもっともたわわになった瞬間を知ることもなく、花弁が舞い落ちて来るのを見て満開の美が過ぎ去っていくのをただだまって見ている僕。音が表れては消えていく時間芸術と言われる音楽も、幸福なひと時も、この桜の美のようにとらえられることなく過ぎ去っていきます。

 美しく散っていく桜の花を見ていると、ショパンピアノソナタ第3番の第3楽章ラルゴの中間部の美しい旋律が思い浮かびます。この楽章はこのピアノソナタの中でも最大の長さを誇り、美しい幸福に満ちた夢のひと時を与えてくれます。美しい音楽をたくさん残したショパンですが、おそらくこの楽章は彼の作品の中でも最も美しいものではないでしょうか。

 ショパンがこのピアノソナタ第3番を作曲したのは、恋人ジョルジュ・サンドと最も幸福な関係にあった時であったためか、このソナタは全楽章にわたって大変美しくまた堂々とした楽想を持っています。ショパン特有の諧謔や病的な要素は影を潜め、その点では前作のピアノソナタ第2番変ロ短調『葬送』とは対照的です。

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ラベル:ショパン
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2012年04月11日

イメージクラシック「夕暮れ」その6

ベルリオーズ 交響曲『イタリアのハロルド』より第2楽章「夕べの祈りを歌う巡礼の行進」

眠りを誘う春の夕べ
眠りを起こす肌寒い風

 ぽかぽかとした陽気は夕方になっても続き、桜の匂いとともにいつの間にかうとうととしていましたが、冷たい風が忍び寄ってきて僕を起こそうとします。ちょっと寒いけど目を覚ましたくない、心地よさいつまでも浸りながらずっとそのままうつ伏せていたいという気持ちと共に、このままの状態でいるとよくないという不安な気持ちがますます僕を動けなくします。

 ベルリオーズ交響曲『イタリアのハロルド』は、イギリスの詩人バイロンの詩『チャイルド・ハロルドの巡礼』の場面を音楽化したもので、独奏ヴィオラの物憂げで甘い響きが印象的です。特に第2楽章「夕べの祈りを歌う巡礼の行進」はヴィオラのアルペジオとホルンとハープが独特の心地よい音楽に酔わせてくれます。

ホルンは春の夕べの眠気を誘い
弦とハープが不気味な響きで不安を煽る

『幻想交響曲』ほど演奏される機会はありませんが、『幻想交響曲』に劣らず、ベルリオーズの魔術のようなオーケストレーションを堪能できる曲だと思います。

ラベル:ベルリオーズ
posted by やっちゃばの士 at 20:37| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 夕暮れ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月07日

イメージクラシック「春の室内楽」その5

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第13番変ロ長調より第5楽章「カヴァティーナ」

夕暮れの桜名残惜しさと物憂さと

 ベートーヴェン弦楽四重奏曲第13番の有名なカヴァティーナはとても不思議な音楽です。そこには祈りと諦念が入り混じったような歌う音楽があります。夕べのイメージを彷彿とさせてくれる音楽でもあるのですが、僕は秋ではなく春の夕べを連想します。まわりは若々しい春が来ているのに、自分はもう年老いてしまったとでもいうような情感でしょうか。

 この曲は1825年(ベートーヴェンの死の前々年)、ベートーヴェンが55歳の時に作曲されました。弦楽四重奏曲第12番、15番とともにセットで出版され、ロシアのガリツィン侯爵の求めで作曲されたことから、ガリツィンセットとも呼ばれています。この3曲の作曲と前作の弦楽四重奏曲第11番の間には約14年間のブランクがあり、前作とは全く違った響き、作風を持っているため、12番以降の弦楽四重奏曲は後期弦楽四重奏曲という総称で呼ばれています。この3曲はそれぞれ違った個性を持っていて、次のような特徴があります。

英雄のように壮大な新境地を歌う第12番
内面の充実を図る第13番
第9のようにドラマティックな第15番

 第13番は派手さはないが大変内面的に充実した作品で全6楽章からなり、器楽的な両端楽章に対して、真中の第2、3、4、5楽章がとても歌謡的なのが特徴的です。このカヴァティーナは第5楽章にあたり、それまで春の陽気にうきうきしていたのだけど、夕べになってちょっと肌寒くもなりしんみりとした気持ちになるとでもいった雰囲気を持っています。カヴァティーナとは抒情的アリアという意味だそうです。



posted by やっちゃばの士 at 14:40| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 春の室内楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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