2012年03月31日

イメージクラシック「嵐」その6

ショパン 練習曲作品10の12『革命』

 ものすごい突風が吹き荒れる一日でした。風は生温く南風なので、もう厳しい冬は去り、春が来たんだという安心感と期待感をもって、少し突風を楽しむ余裕も出てくるのだから不思議です。

 こういう日には激しいロマン派のピアノ曲を聴きたくなります。ショパンは感情をぶつけるような激しい曲を何曲も作曲しましたが、その荒れる感情の激しさにおいては『革命のエチュード』が一番ではないかと思います。

 ショパンはこの曲を、ロシアによって陥落したワルシャワの悲劇に悔しさと怒りをぶつけながら、作曲したと言われています。彼の誕生する15年ほど前に小国ポーランドはロシア、ドイツ、オーストリアによって分割されて領土を失い、他国の支配を受けていました。ショパンはワルシャワ蜂起の当時21歳。彼はウィーンの地で演奏活動を行っていましたが、ポーランド人であるが故の差別に苦しみパリ行きを決意していたところでした。

 上記のように、この練習曲集作品10はショパン20歳過ぎに作曲されたショパンのピアノ独奏曲の傑作の中では最も初期に属する作品です。したがって『革命』には、後年の曲にはない若々しい激情がストレートに表現されています。ちなみに、この練習曲集には他に『別れの曲』『黒鍵』などの有名曲があります。

ラベル:ショパン
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2012年03月30日

イメージクラシック「春」その6

マーラー 交響曲第1番ニ長調より第1楽章

春の目覚め
耳を澄ませば
カッコウや小鳥のさえずり
軍楽隊のファンファーレ
さわやかな風の音

 マーラー交響曲第1番の第1楽章は、大地が春に目覚めてから、自然の生き物たちが活動していく様子が思い浮かぶとてもさわやかな音楽です。特に冒頭の弦のフラジオレットによる神秘的な緊張感は、朝眠りから覚めようとする大地に満ちた春の息吹のようです。朝が明け、親しみやすい第1主題が始まります。同時期に作曲された歌曲『さすらう若者の歌』の旋律を用いた名旋律です。

 ちなみに、この親しみやすい第1主題は、入学式の音楽として使えるのではないかと度々思うことがあります。来月には僕の娘も小学校の入学式と幼稚園の入園式を迎えます。温かい春の日差しの中でこの第1主題を心の中で奏したいと思います。

ラベル:マーラー 入学式
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2012年03月18日

キーワードクラシック「嘆き」その2

ブラームス バラード第1番二短調「エドワード」

取り返しのつかない過ち
冷たい雨が降り続ける夜
犯した罪の大きさにただ嘆くばかり

 若きブラームスのピアノ作品『4つのバラード』は暗い情熱と透明な抒情に満ちた傑作で、特に第1番二短調「エドワード」は、罪を犯した後の後悔や孤独感、悲嘆がブラームス独特の骨太いピアニズムによって抒情的に表現される印象深い作品です。

 標題の「エドワード」とはドイツの詩人ヘルダーの編纂した詩集「諸国民の声」の中のスコットランドの詩「エドワード」のことで、この詩は、父親を殺した息子を母親が問い詰めるといった内容です。標題が付いているのはこの第1番だけで、ブラームスは自らの心情をあえてこのような物語に例えて表現したかったのだろうと思います。右手と左手が親子が会話していくように曲は進んでいきます。

 この曲が作曲されたのは1854年ですが、この年の2月27日に恩師シューマンがライン河に投身自殺を図るという悲劇が起こります。シューマン家と深いかかわりを持つ中で、シューマンの妻クララに惹かれていく自分が、シューマンを自殺に追い込んだのではないかという気持ちがあったのかもしれません。



ラベル:ブラームス
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2012年03月17日

キーワードクラシック「かなしみ」その4

チャイコフスキー バレエ『白鳥の湖』より序奏

悲しみの海
おだやかな日差しが
うらめしい

 昨年の今頃は、地震の被害で日本中が苦しんでいました。一年たって穏やかな東京湾を眺めていると、昨年のかなしみが波に乗って伝わってきます。あれから多くの人たちが「がんばろう」と希望の歌やメッセージを寄せました。しかし、失ったものは二度と戻ってこないという現実を消し去ることはできません。いっそのこと希望の歌を歌うよりも、思いっきり悲しみたいというのが素直な気持ちなのではないでしょうか。

 なみなみと冷たい海水を湛えた運河を眺めながら、『白鳥の湖』の冒頭の序奏の悲しげなオーボエの旋律を思い浮かべました。『白鳥の湖』は魔法使いによって白鳥の姿に変えられたオデット姫とそれを助けようとするジークフリート王子の物語で、最後は魔法使いに騙されて命を失ってしまうという悲劇です。悲しげなオーボエの旋律の後、音楽は次第にスピードを上げオーケストラが激しい葛藤を描きます。この部分は、あるいは魔法の力愛の力が激しくぶつかり合っているようでとても充実した音楽です。やがて悲しみの旋律が運命のように響き渡りバレエの第1幕が始まります。

 この序奏はバレエ組曲に含まれていないため、あまり有名ではないかもしれませんが、組曲に入ってもおかしくない優れた音楽です。また、このバレエの音楽はすべてインスピレーションに満ちていて、透明感のある美しい抒情にあふれています。穏やかな海に僕はそっとこの音楽を捧げたいと思いました。

posted by やっちゃばの士 at 21:10| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | かなしみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月10日

イメージクラシック「雨」その14

ショパン バラード第2番ヘ長調

 久々に2日間続けて雨が降りました。長い雨は春が近づいていることを教えてくれます。春を感じてうれしいという気持ちと、冷たい雨の厳しさに気がふさぐという2つの感情が交互にまじりあう不思議な気持ちです。

 しとしとと降る雨の情緒に合うと思われるのが、ショパンバラード第2番です。この曲は穏やかで落ち着いた主題で始まりますが、この部分の雰囲気が『雨だれ前奏曲』を彷彿とさせます。穏やかな音楽が一巡した後、突然嵐のようなプレストになります。これでもかと大地にたたきつける嵐の雨のようです。嵐が静まった後、冒頭の穏やかな音楽と激しいプレストが繰り返しコーダに入るのですが、このコーダがまたものすごい音楽です。怒りと悲しみをたたきつけてもたたきつけきれないといった感情の爆発が伝わってきます。

大雨の中で叫ぶショパンという男

の姿がそこにはあるように思います。

 この曲をショパンは自らの意欲作だと思っていたためか、この曲をシューマンに献呈しました。ところが、シューマンはこの作品をあまり評価しなかったとそうです。おそらくシューマンの美意識に適わなかったからだと思いますが、ピアノソナタ第2番『葬送』と並んで最も前衛的な作品であることは間違いないでしょう。



ラベル:ショパン
posted by やっちゃばの士 at 20:01| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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