2012年02月28日

イメージクラシック「サスペンス」その1

ヴェルディ 歌劇『運命の力』序曲

 19世紀、ワーグナー以外の作曲家によるオペラ作品のほとんどが、人間関係のもつれ、愛と憎しみ、裏切りと復讐、殺人と自害などをテーマにしています。これは今でいえばテレビドラマの「サスペンス劇場」に相当すると僕は思います。

 テレビのなかったヨーロッパの19世紀の市民はドラマを見るために劇場に出かけました。歌劇の幕が上がる前の序曲をわくわくしながら聞いたことでしょう。サスペンスドラマが始まる前のわくわくぞくぞくした感じを最も伝えてくれる作品が、ヴェルディ歌劇『運命の力』の序曲です。

 歌劇『運命の力』はヴェルディの中期の終わりに作曲された作品で、主な登場人物がすべて死ぬという陰惨極まりないストーリーです。そういったストーリーを象徴するように、序曲の音楽は

運命が迫りくるような切迫感

運命から逃れようとする祈り

に満ちているのが特徴的です。この序曲は数あるヴェルディの序曲の中でも傑作として名高く『椿姫』『リゴレット』など多くの傑作を多く送り出した経験を経て身に付けた円熟したオーケストラ技法が感じられます。その圧倒的なスケールを作曲者自身も感じていたためか、この序曲のことをシンフォニアと呼んでいたようです。


ラベル:ヴェルディ
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2012年02月22日

イメージクラシック「冬」その8

スメタナ 交響詩『わが祖国』より第4曲「ボヘミアの森と草原より」

枯れた野に冷たい風が舞う
果てしなく続く冬の平原
向こうに森が見える
森の中は風がなく温かいだろうか
木々の枝は風に激しく揺れているようだが

 スメタナの連作交響詩『我が祖国』の第4曲「ボヘミアの森と草原より」を聴くと、冬の緊張したボヘミアの野原の風景が広がります。スメタナは冬の風景を描写しているわけではありませんが、チェコのボヘミア地方は北緯50度前後に位置しているためか、北緯35度前後に住む僕には冬の景色を表しているように感じます。

 曲は短調で始まり、緊張感に満ちた部分と、のどかな田舎を思わせる部分と、ボヘミアの舞曲ポルカが登場する部分があり、中欧の風土の雰囲気を表した曲としては一番手に上がる曲ではないでしょうか。



ラベル:スメタナ
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2012年02月21日

イメージクラシック「田園」その3

シベリウス 交響曲第1番ホ短調より第3楽章

午後の田園
解けて流れだす滝に虹がかかり
農民の心は弾む
まだ春は遠いけれども

 シベリウス交響曲第1番の第3楽章は、春先の田園情緒にあふれた楽章です。打楽器が刻むスケルツォのリズムは心が躍る農民のダンスのようで、とても素朴で牧歌的な魅力にあふれています。時折登場するハープは滝にかかった虹のようです。

 この楽章の後、第4楽章では再び寒い冬を思わせるように厳しい音楽になるので、小春日和のようなこの第3楽章は大変存在感があります。今年はまだ温かくなりませんが、2月も後半になると春を思いながら聴きたくなる音楽です。


ラベル:シベリウス
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2012年02月13日

イメージクラシック「海」その8

ヴォーン・ウィリアムズ 『海の交響曲』より第1楽章

見よ、海そのものを、
そして、その果てしなくうねる胸に、あの船たちを。
見よ、白い帆が風をはらんで、緑と青の海に点々と浮いているのを
見よ、汽船が港から出たり入ったりして、往きかうさまを
見よ、長い旗のような長い煙が、暗くたなびいているさまを。
見よ、海そのものを
また、その果てしなくうねる胸に、あの船たちを
(ウォルト・ホイットマン 三浦淳史訳)

 40歳の誕生日を迎えた今日、僕は新しく開通した東京ゲートブリッジを通って出勤しました。富士山の裾野のような緩やかなスロープを上っていく時のワクワク感は格別なものがありました。橋の頂点からは、東京湾を行きかう船と青空に舞い上がる飛行機が見え、僕の車と船と飛行機がクロスするような何とも言えない気持ちよさを感じました。

新たな出発

 20世紀のイギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズ海の交響曲の冒頭のファンファーレと、それに続く大パノラマのような合唱、砕け散る波のような音の余韻が同時に響いてきました。

 ヴォーン・ウィリアムズは9曲の交響曲を作曲しましたが、最初の交響曲を声楽入りのオラトリオのような交響曲としました。一見交響曲のようには見えないのですが、4つの楽章の枠の中にきちっと納められています。時々民謡風の親しみやすい音楽も顔を出し、イギリスの作曲家ならではの魅力にあふれています。


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2012年02月12日

イメージクラシック「静寂」その2

シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調より第2楽章

 冬の野山はとても静かです。動物の鳴き声は聞こえず、時折風が葉をゆする音が聞こえるだけです。人里から離れれば離れるほど静寂は増し、深い藍色のため池の表面は波一つ立てず、辺りを静寂の闇に包みこんでいきます。

風に乗ってかすかに聞こえてくる明るい歌

 シューベルトの遺作ピアノソナタ第21番は静寂に満ちた長大なピアノソナタですが、そのなかでもとりわけて静寂感に満ちているのが第2楽章です。野山を旅する若者の孤独な心情を表しているように感じます。中間部の明るい旋律は、重い足取りで旅を続ける若者に、どこからともなく明るい春の歌が伝わってくるようです。

 このソナタを筆頭に、シューベルトのピアノソナタには自然の静寂感が漂っているものが多くあります。自然の中を散歩しながら、シューベルトは作曲のインスピレーションを多く得たのかもしれません。


ラベル:シューベルト
posted by やっちゃばの士 at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 静寂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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