2011年12月31日

キーワードクラシック「感激」その1

マーラー 交響曲第2番ハ短調『復活』より第5楽章

私は生きるがために死ぬ
後は神が導いてくださるだろう

 マーラー交響曲第2番『復活』の最終楽章に高々と歌われるテーマです。マーラーの音楽は非常に甘く母性的な響きを持っています。復活の歌は、母なる大地から神秘的に湧き出でて、最後には感激のフィナーレとなります。この交響曲は80分を超す大作ですが、フィナーレでオーケストラが復活の歌を高々と歌いあげる部分は、何度聴いても感激で、この感激を味わうためにそれまでのすべてがあったのだなと感じさせてくれるように思います。

 この交響曲は、@声楽付きであること、A暗から明へとストーリーを持っているということで、ベートーヴェン第9と比較されることが多いですが、次の点で大きく異なっていると僕は思います。

@母性的であること 
ベートーヴェンの第9は、まさに「闘争」から「勝利」を勝ち取るといった男性的な音楽であるのに対して、マーラーは「絶望」から「救い」へという癒しと言ってもいい母性的な音楽です。

A汎神論的であること
 第9が一神教のキリスト教的であるとするならば、『復活』は汎神論的であります。第9は闘争から勝利へという各楽章が直線的な流れを持っていますが、『復活』は第3楽章が自作の『子供の不思議な角笛』からの引用であるといったコラージュ的な構成になっています。第9が神との対話であるならば、『復活』は自然との対話です。

B最終楽章の構成
 第9では、前半に「歓喜の歌」が登場し、以後約20分近くも喜びの音楽が続きます。僕はちょっとうんざり感じるところがあり、コーダの部分になるとほっとします。『復活』の終楽章も第9と同じように30分近くかかる巨大な楽章ですが、前半部が「最後の審判」をあらわす嵐のような音楽、中間部は静かな森と闇を思わせる静寂に満ちた音楽、そして終結部になってようやく勝利に満ちた輝かしい音楽が登場します。この輝かしい音楽をもって終結するので、感激の余韻も大きなものとなります。

来年は感激の一年を送りたいものです。


ラベル:マーラー
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2011年12月28日

イメージクラシック「日の出」その4

ハイドン 弦楽四重奏曲第78番変ロ長調『日の出』より第1楽章

 東京の湾岸沿いを早朝東へ向かって走っていると、丁度目の前から太陽が昇ってきました。まだ初日の出までには何日かありますが冬至を過ぎたばかりで、日の出はさらに遅くなっていきます。ところで、東の海に面し日の出を望むことのできる場所は「日の出」という地名になっているところがたくさんあります。僕が住んでいる浦安市にも、出身地である玉野市にも「日の出」という地名があります。非常に単純明快な地名の付け方ですね。

 ハイドンには、この地名と同じように、曲の印象や作曲や演奏時のエピソードに関係したニックネームがついている作品が多く存在します。特に交響曲104曲と弦楽四重奏曲82曲は、あまりにも数が多いため、本人の意図とは直接的には関係がないニックネームがつけられています。弦楽四重奏曲第78番変ロ長調は『日の出』というニックネームがついています。第1楽章の第1主題が描く


緩やかなヴァイオリンの上昇カーブ

が日の出を連想させるからです。この音型は何度も登場し、しばし日の出の情緒に浸らせてくれますが、上昇カーブの後に溌剌とした音楽が続き、この曲が日の出とは全く関係ない曲だということに気付きます。このようにニックネームの『日の出』というのは、単なる目印程度の意味しか持たない訳ですが、それでもあえてニックネームに感情移入して聴いてみようという気を起させるのですから、ニックネームの存在価値は大きいと言えます。

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2011年12月26日

イメージクラシック「雪」その4

ハイドン 交響曲第45番嬰へ短調『告別』より第1楽章

汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 今日も風さえ 吹きすぎる(中原中也) 


 夕方の帰宅時、関東平野の空は雲がないところと不気味な黒い雲で二分されていました。の空は黒雲に覆われ、スカイツリーも巨大な黒雲をバックにすると何だか大変小さな存在のように思えたものでした。おそらく北の方は雪が降っているのだろう。に下ってくるかもしれないという不安と緊張を感じながら、僕は帰路を急ぎました。

 ハイドン交響曲第45番の第1楽章。雪がひらひらと舞い落ちて来るように、下降音型の主題が何回も繰り返されます。最初トゥッティで出た後、チェンバロがこだまのようにソロで同じ旋律を繰り返しますが、雪の厳しさを遠くから眺めている僕の立場は、このチェンバロのようなものかもしれないと思いました。

 この交響曲の第1楽章は、ハイドンの104曲の交響曲の中でも、最も強烈な印象を与えてくれる曲です。そのインパクトは古典派の交響曲においては、モーツァルト小ト短調(交響曲第25番)と双璧をなす曲ではないかと僕は考えています。『告別』というニックネームは第4楽章のエピソードから来ていますが、それ以上のニックネームをつけたくなるほど存在感があるのがこの第1楽章です。

夜には雪が降り積もっていることだろう





ラベル:ハイドン
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2011年12月24日

イメージクラシック「夢」その8

チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より第1幕第8曲「冬の松林」

 寒いクリスマスイヴとなりました。日暮れ間近になると冷たい風が吹き荒れ、わくわく感よりも現実の厳しさを感じてしまうところです。「夢」からは程遠い現実ですが、程遠いからこそ「夢」なのかもしれません。「夢」が簡単に実現できてしまったら、そこには感動がないでしょう。また「夢」は極限の中で、不意に訪れるものだとも思います。予測できないからこそ「夢」だということが出来ると思います。

ふと外を見ると辺り一面が夢のような銀世界
月の光がやさしく包み込む
松の冷たい針葉が白い帽子をかぶっている

チャイコフスキー『くるみ割り人形』の「冬の松林」は、夢の国の入口の感動を伝えてくれる曲です。ハープの美しいアルペジオに続いて、ほのかに哀愁を帯びた旋律が、まるで雪が降り積もるように反復しながら次第に盛り上がり、やがて「雪片のワルツ」へと続いていきます。

「冬の松林」は『くるみ割り人形』の中で最も感動的な部分の一つだと思います。この部分は、第2幕「お菓子の国」への導入部分に当たりますが、現実から夢へ、戦いから勝利へというストーリーの流れで考えた時、やはり変わり目の部分が一番新鮮で印象が強いのでしょうか。第2幕に入ってからは、有名な踊りが何曲も登場しますが、バレエの場合、踊りを見せる芸術であるため、夢に入ってしまうと音楽が楽しいけれども多少単調に感じられてしまう要素があるように思います。

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アンバサダーホテルにて

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2011年12月20日

イメージクラシック「クリスマス」その3

プッチーニ 歌劇『ラ・ボエーム』より第1幕、第2幕

 オペラでクリスマスにちなんだ曲というと、子供のための曲がまず思い出されます。フンパーティング『ヘンゼルとグレーテル』は、その代表で、ドイツではクリスマスに上演されるのが通例になっています。ただ、大人からみるといささかロマンティックな気分を味わうには物足りないのは事実です。そんな大人のためのクリスマスオペラとして、プッチーニ『ラ・ボエーム』を第1に上げたいと思います。

『ラ・ボエーム』の第1幕、第2幕はクリスマスイヴのパリ。ラ・ボエームとはフランス語でボヘミアンと言う意味で、ボヘミアンの詩人、画家、哲学者、音楽家たちの生活と恋の物語です。このオペラは音楽が非常に抒情的で、ストーリーも美しく、多くのオペラの材料として登場する欲望や嫉妬などの感情がありません。僕は結構ストーリーを気にしますが、ストーリーを見て、プッチーニのオペラで最初に聴いてみようと思ったのがボエームでした。

第1幕の詩人ロドルフォと針子のミミが出会う場面は、まさに運命の出会いともいうべき感動的な音楽が流れます。ミミがろうそくの火を貸してほしいと、ドアを小さくノックして訪ねて来るのですが、貧しい二人が冷え込んだボロアパートでの出会ってから互いに自己紹介するまでの歌を最初聴いたときは、涙がこみ上げて来たものです。

2人を包むように照らす温かい月の光

やがて仲間の呼ぶ声に促されて、クリスマスイヴのパリのにぎやかな街へと出かけていきます。この部分はとても色彩感豊かな音楽で、クリスマスイヴの生き生きとした雰囲気が伝わってきます。

感動と楽しさ

が詰まったこのオペラを僕は20年ぶりに聴いてみました。悩める独身時代の思い出とともに昔感じた感動も伝わってきました、

ラベル:プッチーニ
posted by やっちゃばの士 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | クリスマス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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